1月12日(日)ゆき
いつもは雪が溶けかけている時期。でも、今年は異常気象みたいで溶けかけていた雪に今日また雪がふりつもってゆく。
いつもの朝。愛ネコ暖ちゃんもいつも通り寝てる。
暖かいのが大好きな私は寒い布団の外に出ることをもがきつづけている。なんでそんなにでたくないのかって?それは、まさか今日雪が降るとは思わなくて暖房をいつもより低くつけていたからだ。外の寒さ+暖房が低いという二段階の寒さを私の体と脳みそが拒んでいるのだ。
ぐ〜
お腹の音が寒い部屋に響く。
その音に暖ちゃんが寝ながら耳を傾ける。
このままベットにいたらお腹すいてさらに動きたくなくなっちゃう....。仕方なく布団からもぞもぞと出る。部屋のあまりの寒さにガタガタ身震いしながらリビングに向かう。
私の冬の必需品、コタツのコンセントをさしてお湯を沸かす。6枚切りの食パンを1枚とってトースターに入れる。コップとスプーンを用意したら、コップに多分78.5℃くらいのお湯とコーンスープの素を入れてスプーンで混ぜる。食パンがキツネ色に染まってきたらおさらに置いて....
はい。朝ごはんのかんせーい。
朝は本当に少食だからこれだけで腹6分目になる。
でも、そこに....
ピンポーン
アパートのチャイムが鳴る。
コタツに入ったまま少し大きめな声で言うと、
ガチャ
朱音さんが入ってきた。平日は朝6時くらいに、土日はお昼後にきて昨日の夕飯の余り物やお菓子を持ってきてくれる心優しい人だ。私の手のひらくらいは食べないと「しっかり食べてる?」と心配されてめんどくさくなってしまうので腹6分目くらい食べておくとちょうどいいのだ。
朱音さんは私より4つ年上なこともあって、とっても料理が上手だ。中でも煮物系がこれはまたとっても絶品なのだ。タッパーに詰められた肉じゃがを蓋を開けてみてみると、
見るからにしっとりとしたじゃがいもとにんじんが苦手な私のためにしっかり煮込んでくれたのであろう柔らかそうなにんじん、火加減がちょうどよく硬すぎずに仕上がった薄切りの豚肉。みているだけでヨダレが出てくる。
口調がおばさんくさくなってる朱音さん。節約のために食パンを食べ終わった後のお皿に肉じゃがをとって食べる。
暖ちゃんが廊下からひょこっと顔を出してくる。
バタン....ガチャン
朱音さんが玄関を合鍵でしっかり締めて帰っていった。
暖ちゃんがいつも薄くしか開かない蒼い眼を私の目と合わせて脳に響くような、ハッキリとした声でないた。
そう。ネコ語はやっぱり分からない。だからその時、私は気づかなかった。暖ちゃんが....私に........ことを....。
「....て。」
声が聞こえる。
「お....て。」
誰の声?
「おきて。」
なんだろう、この声懐かしい....?
なに?声が遠く、なんで?なんなの??こわいっ!
一緒に寝落ちしてしまった暖ちゃんにコタツの毛布をかけて立つ。
寝ていた間に止んだのか、雪はもう降っていなかった。気温が朝よりもずっと暖かくなっていたから、あんなに寒かった部屋もぽかぽかになっていた。
時間割を確認して忘れ物がないか、宿題のやり忘れがないか、一通り確認する。忘れているところはなく、そのまま復習に励む。
カリカリ....
シャーペンの音が静かな部屋に鳴り響く。
なんだか静かすぎて落ち着かなくて時計を見ると、20時。
ぐ〜
お腹が再び鳴る。
リビングに向かい、冷めてしまった肉じゃがをチンして頬張る。
とろけるような舌触りのじゃがいもとにんじんに思わず、にやけていると。
暖ちゃんが大きなあくびをして起きる。
活気のない暖ちゃんの返事。随分疲れている様子。寝ていただけなのに。でも、寝るのって結構疲れるよね。分かる。
肉じゃがを残らずたいらげて。コタツに置きっ放しだったコップとお皿、スプーンと一緒にタッパーも洗う。
そのあとはお風呂に入って、歯磨きして。
あとは寝るだけっ!だんだんと寒くなってきた部屋に長く居座ることなくそのままベットにダイブ!したいけどタイブは埃がたつからやめておく。
あれだけ寝たのにまだ眠たそうな暖ちゃんに心の中でまだ寝るのかーっ!とツッコミながら、自分もかなり寝ていることに気づく。自分で苦笑しながらそのまま、眠りにつく。
ぼろっ
涙が溢れる。
意味も分からずただただ溢れ、流れ続ける。
ぽふっ
あれだけ寝たから声で起きてしまったのか、暖ちゃんが私のベットに乗ってスリスリしてくる。
ふと、視界の端になにかがいたような気がして目をむける。
暖ちゃんがまた鋭い目つきで、そしてハッキリとした声でなく。
視界の端にハッキリと誰かがいるのが見えた。
白いパーカーで、蒼いジーパン、色素の薄い髪の毛、見覚えのある男の子。
あの夢の男の子。冬樹がいた。
冬樹が抱きついてこようと飛びかかってくる。
自己防衛の体制を思わずとる。
ゴツンッ
だが、冬樹は私をすり抜け、私の後ろの壁に顔面から衝突する。
同時に冬樹が変な声をあげる。
時計を見ると12時ちょっきり。
もう1度冬樹のいたところを見ると、そこにはもう冬樹の姿はなかった。
急に現れてあっという間に消えた。本当にあっという間に。
いつのまにか暖ちゃんは自分のベットで熟睡していた。
この日は寝れずに朝を迎えてしまった。
_あとがき_
読んでくれてありがとうございます!
オリジナルの作品なのに見てくださって本当に嬉しいです!もう嬉しすぎて感動....。wちなみに私、純愛物がかきたくてずっと準備してたんです。でも、w何故だが1話がものすごく長くなってしまいました....。すみません。もっと細かく分けたりとかすればよかった。( ; ; )まさかの約4000文字....!いつもは900〜1000をメアスにして書いてるので、すっごいこの数字にびっくりしてますw次回はいつも通りの長さで書きたいと思います。はい。それではまた次回!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!