そうだった。
正直、この制度はどうかと思う。
プライバシーとはなんだ?
プライバシーもクソも無いぞ。
また始まった…
そう思いながら、腰に巻いてる桃色のカーディガンを少しいじる。
自分の瞳の色に合わせた青色のネイル、
少し短い黒色のスカート。
そして肩に掛けているラケットケース。
もう時間も迫っているというのに、景吾様の口は止まらない。
あ、
と声が重なる。
昔のように、言い合いをした。
幼なじみの時と、同じように。
従者失格だ。
逃げるようにして私は門をくぐる。
ラケットケースが跳ねて痛い。
うるさい
と言いそうになったが、
私は従者、私は従者と自分に言い聞かせ、
そのまま待ち合わせ場所まで走った。
何をしてようか、
とりあえずポケットからスマホを取り出す。
「着いたよ」と送り、
返信を待つ。
予定時間より10分も早い。
まだ来るわけ無いだろうと思いながら、
ネイルをもう一度確認する。
なんだコイツら、
とキレそうになりながらも、
今までの従者経験で培った演技力を発揮する。
ギャルを望んでいるんだろ?お前ら。
と言いそうになりながらも
ギャルを装う。
男だぞ男。
と言いそうになりながらも、
私は目の力を落とす。
相手はウッと言いそうになる。
金無いのにナンパすんなよとかブツブツ言いながら、
私は男2人の肩を叩いた。
先程より低い地声でそう言い放った。
普通の女性より低いその声を聞いて、
男2人は震え上がり、どこかへ逃げてしまった。
あと5分か。
フラペチーノでも買おうかなーと、
近くのショップを見渡す。
あ、もう来てた。
いつの間にかメッセージも。
私はいつもの低い声で、声をかけた。
私の吊り目を和らげるのに最適な服装。
そんなことを言いながら、今日のデート場所に向かう。
現在、ストリートテニス場。
確かに、杏と桃城さん、越前さんは居る。
まぁ色々あり、かなり楽しかった。
裕太さんとテニスをしたり、
ダブルスを不二さんと組んだり。
時が経つのは早く、いつの間にか6時になっていた。
少し日が沈みだした頃、私たちは肩を揺らす。
その時、
マズい。背後をとられてしまった。
顔を蹴り上げようと足を上げると相手は華麗によけた。
私が武器を出そうとしている間に
ラケットとボールを使い、
相手が深く被っている帽子を脱がせる不二さん。
帽子を脱がされた相手を見て、
私は目を見開いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。