第20話

行かせてください。全国に。
351
2023/01/08 08:00
向日 岳人
はぁ…だけど、全国大会、
いけねぇのか、
美澄 柊乃
美澄 柊乃
…まぁ、一回戦敗退ですから、ね
関東大会の一回戦で、氷帝は青学に敗北。

全国大会に出るには、関東大会で勝ち抜かなければ

いけなかった。
忍足 侑士
まぁ、しゃあないな…
テニス部の気合いも無くなってきている。

コートで熱心に練習をしているのは、

レギュラーの景吾様くらいだ。
向日 岳人
てか美澄、背高いな。
美澄 柊乃
美澄 柊乃
…向日さんが低いだけです
向日 岳人
…クソ、クソ!
言わなきゃ良かった!
向日さんが158cmなのに対して、

私は、163cm。

私の方が背が高い。

低身長なのを気にしている向日さんにとっては、

かなりの屈辱だろう。
忍足 侑士
…そういえば、
監督から連絡きとったな、
後で来い、って
美澄 柊乃
美澄 柊乃
さかき先生ですか。
テニス部員だけ、ですか?
忍足 侑士
ああ。部員だけや。
…なんやろな、結婚発表か?
美澄 柊乃
美澄 柊乃
榊先生、そういえば独身でしたね
向日 岳人
あのイケメンなら
女寄って来そうだけどなぁ、
ガチで結婚発表あり得るって
なんだろうと言いながら榊先生の所へ向かっている2人を見送り、

私は教室に戻ることにした。
美澄 柊乃
美澄 柊乃
っていっても、
教室には誰もいないかな、
案の定、教室には誰一人生徒が居ない。

まぁ、放課後だから仕方がない。

暇だ、と思いながらも景吾様からの帰りの連絡を待つ。

今日も遅いかな、と考えていると後ろのドアが

開く音がした。
_
美澄。
大きい、低い声。

先生だ。
美澄 柊乃
美澄 柊乃
はい。
榊 太郎
跡部を知らないか
美澄 柊乃
美澄 柊乃
景吾様は、
榊先生の所へ向かわれたと思いますが
榊 太郎
来ていない。
榊先生の真剣な表情。

とても大切な用事なんだろう。
_
跡部部長ーッ!
宍戸 亮
跡部ーッ!
_
跡部部長!どこですかッ!?
他のテニス部員の声も聞こえる。

仕方がない、と私は呟き、

景吾様を探すことにした。
跡部 景吾
手塚ッ、
あの時の試合の感触を、今でも覚えている。

俺は手塚に、勝たなければいけない。
跡部 景吾
手塚ァッ!
1人で壁に打ち続ける。

榊監督の指示も無視して。
向日 岳人
跡部ッ、!
宍戸 亮
跡部ッ!
俺の近くに来たレギュラー達が俺の名を叫ぶ。

打ち続けながら、耳を傾ける。
向日 岳人
全国大会開催地で、
東京が選ばれた!
鳳 長太郎
そこで、開催地区特別出場で、
氷帝が選ばれていますッ!
日吉 若
跡部さんッ、!
俺は…俺達は、全国に出たいッ!
そんな情報、デマかもしれないだろうと言いそうになる。

だが、俺は次の声で目を覚ました。
榊 太郎
跡部。
監督だ。

監督が冷たい声でそう俺の名を呼ぶ。

ラケットを止め、振り向くと監督は真剣な顔をした。
榊 太郎
お前の決断で、
全国に行くか、行かないかが決まる。
特別出場というのは、実力主義の氷帝の趣味ではない。

だが、部員達のこの意志の強さを、

実力主義という名で押し潰す訳にもいかない。

それに、

また、本気のテニスをしたい。

俺の決断は、早かった。
跡部 景吾
行きます。全国。
 
跡部 景吾
行かせてください。
榊監督は、どのような表情をしているのか。

少し目を開くと、やはり真剣な顔をしていた。
榊 太郎
お前達の意志は、固いな。
皆の顔が明るくなる。

監督は、全国へ行くのを許してくれたようだ。
榊 太郎
行ってよし!

プリ小説オーディオドラマ