関東大会の一回戦で、氷帝は青学に敗北。
全国大会に出るには、関東大会で勝ち抜かなければ
いけなかった。
テニス部の気合いも無くなってきている。
コートで熱心に練習をしているのは、
レギュラーの景吾様くらいだ。
向日さんが158cmなのに対して、
私は、163cm。
私の方が背が高い。
低身長なのを気にしている向日さんにとっては、
かなりの屈辱だろう。
なんだろうと言いながら榊先生の所へ向かっている2人を見送り、
私は教室に戻ることにした。
案の定、教室には誰一人生徒が居ない。
まぁ、放課後だから仕方がない。
暇だ、と思いながらも景吾様からの帰りの連絡を待つ。
今日も遅いかな、と考えていると後ろのドアが
開く音がした。
大きい、低い声。
先生だ。
榊先生の真剣な表情。
とても大切な用事なんだろう。
他のテニス部員の声も聞こえる。
仕方がない、と私は呟き、
景吾様を探すことにした。
あの時の試合の感触を、今でも覚えている。
俺は手塚に、勝たなければいけない。
1人で壁に打ち続ける。
榊監督の指示も無視して。
俺の近くに来たレギュラー達が俺の名を叫ぶ。
打ち続けながら、耳を傾ける。
そんな情報、デマかもしれないだろうと言いそうになる。
だが、俺は次の声で目を覚ました。
監督だ。
監督が冷たい声でそう俺の名を呼ぶ。
ラケットを止め、振り向くと監督は真剣な顔をした。
特別出場というのは、実力主義の氷帝の趣味ではない。
だが、部員達のこの意志の強さを、
実力主義という名で押し潰す訳にもいかない。
それに、
また、本気のテニスをしたい。
俺の決断は、早かった。
榊監督は、どのような表情をしているのか。
少し目を開くと、やはり真剣な顔をしていた。
皆の顔が明るくなる。
監督は、全国へ行くのを許してくれたようだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。