第6話

暗転
40
2021/08/31 10:32
花火があがるまで、2人は屋台をぶらつくことにした。


赤と白のちょうちんがレトロな雰囲気を漂わせている。



『私、殺されたんだった』


という衝撃的なカミングアウトに、正直気分は夏祭りどころではない。
ケイ
ケイ
お前、やっぱりあのポスターに犯人が……
???
???
違うって
???
???
さっきから何回も言ってるでしょ

ぷいと顔を背ける彼女は、右手にわたあめを持っている。
???
???
もうその話はやめて
ケイ
ケイ
でも
???
???
ね、射的であれ取ってよ

強引にぐいと袖を引かれ、危うく転びそうになる。


彼女は、何をどこまで思い出したか言わない。
ケイ
ケイ
(ごまかし続けるつもりか?)

もやもやした気持ちを抱えながら、仕方なしに射的の方へ向かうと、ドンと胸に響く音がした。


花火が上がり始めた。


袖を掴んでいる彼女の手に、力が入る。
ケイ
ケイ
(……何だろう、胸騒ぎがする)

花火の音をきっかけに、自分の過去を思い出した。


軍服を身に纏った時の緊張感、目の前で撃たれて倒れる被害者、口の中に広がる血の味。
ケイ
ケイ
(……花火の音が、まるで大砲みたいだ)

思い出したくない過去の映像が次々と流れ、一気に心が沈む。


ふと彼女を見ると、自分の袖を握りしめたままじっとしている。
ケイ
ケイ
おい……
???
???
あっ
???
???
ほ、ほら、射的

トンと背中を押され、屋台のお兄さんと目が合う。


白い歯を見せて豪快に笑いながら、彼女のために取ってやんなと射的銃を渡された。
ケイ
ケイ
(……なんか、懐かしい)

妙に重く感じるその銃から、生々しい記憶が引き出されそうになる。


両手が微かに震え、引き金がカチカチと鳴る。


片目を閉じ、銃を構えたその瞬間。


1人の少女の姿が脳裏に浮かんだ。


そして彼女の息を呑んだ音が聞こえた。


























ケイ
ケイ








































銃が手から滑り落ち、地面に衝撃的な音が鳴り響いた。

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