第4話

出発の朝
31
2021/08/31 10:25
公園に朝の光が射し込み、それを合図に蝉が鳴き始める。



眠りから覚めたケイは、肩にずっしりとした重みを感じた。

???
???
Zzz…
ケイ
ケイ
ぅえ?!?!

重みの原因は、彼女だった。


彼女が実体となり、ケイの肩にもたれかかっている。


そしてそれはケイも同様だった。
ケイ
ケイ
(い……生きてる?)


顔にかかる黒髪が、陽の光に当たり艶々と輝いている。
???
???
ん……
彼女がもぞもぞと動いた。
ケイ
ケイ
(……あたたかい)


生前の記憶が蘇る。


兵士になる前の、笑顔で溢れた平和な日々。


ケイ
ケイ

「もっと生きたかった」
         ……か


彼女の声が、頭の中で再生された、その時。
???
???
ええ!?!?なにこれ!?!?

彼女がすっとんきょうな声を上げて起きる。
 

そして、目を見開いて自分の両手を凝視している。
ケイ
ケイ
うるさい……
???
???
あっごめんなさ……
???
???
でぇっ?!?!

彼女は声のした方に振り向くと、出会って史上最高の至近距離に、迷惑そうな彼の顔があった。


彼の銀色の髪が風に揺れる。


彼女は自分の両腕をぎゅっと抱きしめた。


確かな肉感が感じられる。
???
???
私……生きてる

あたたかい涙が白い頬を伝う。
???
???
うう……
ケイ
ケイ
……お前、泣いてばっかだな
???
???
だって……ぐす……
ケイ
ケイ
まあ、よかったな
???
???
うん……

ケイは、涙を流して喜ぶ彼女が少し羨ましかった。
???
???
……ケイ君は?
???
???
……嬉しくないの?
ケイ
ケイ
…………
ケイ
ケイ
ちょっと懐かしい、かな

ほんの少し、彼の顔が和らぐ。


それは、彼にも彼の過去がある証明だった。


そこで彼女は、あることを思いつく。
???
???
ケイ君、一つ提案があるんだけど

凛とした声が公園に響いた。
???
???
私と一緒に、思い出を作りに行かない?

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