公園に朝の光が射し込み、それを合図に蝉が鳴き始める。
眠りから覚めたケイは、肩にずっしりとした重みを感じた。
重みの原因は、彼女だった。
彼女が実体となり、ケイの肩にもたれかかっている。
そしてそれはケイも同様だった。
顔にかかる黒髪が、陽の光に当たり艶々と輝いている。
彼女がもぞもぞと動いた。
生前の記憶が蘇る。
兵士になる前の、笑顔で溢れた平和な日々。
彼女の声が、頭の中で再生された、その時。
彼女がすっとんきょうな声を上げて起きる。
そして、目を見開いて自分の両手を凝視している。
彼女は声のした方に振り向くと、出会って史上最高の至近距離に、迷惑そうな彼の顔があった。
彼の銀色の髪が風に揺れる。
彼女は自分の両腕をぎゅっと抱きしめた。
確かな肉感が感じられる。
あたたかい涙が白い頬を伝う。
ケイは、涙を流して喜ぶ彼女が少し羨ましかった。
ほんの少し、彼の顔が和らぐ。
それは、彼にも彼の過去がある証明だった。
そこで彼女は、あることを思いつく。
凛とした声が公園に響いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!