第20話

第10話 あの時の大学生 前編
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2021/06/26 12:00
皆さんこんばんは!!

読み逃しの話、ありませんか!?!?
前回、伊央里までも攫われてしまいました…
※すっ飛ばしちゃった人は是非前の話をチェックしてみてください💡

そして今回は遥輝の過去が明らかに!!!!

では、スタート❗

━━━━━━━━━━━━━━━
目を覚ますと……



俺は全身をロープで固く結び付けられ、地面に寝転ばされていた。




ここはどこだ……??




どこかの寂れた工場の跡地のようだ。





そもそも、なんでこうなった?





俺は昨日仕事を終えた後に会社のビルの地下駐車場に行って……







と、整理している時に、


「目を覚ましましたか。仙名社長」


聞き覚えのある声がした。



声のする方を見上げると、そこには偉そうに仁王立ちをする男が。



















安西だ。













第10話 あの時の大学生



「お前……」

安西の横には、恐らく欧州組の手下と思われる男が複数人いた。

「君の調べは付いている。まさか君が、“あの時の大学生”とはな。君の目的はなんだ?俺の排除か?」

と言って安西はしゃがみ、俺の前髪を掴んでグイッと上に引っ張ってきた。
俺は安西の事を鋭い目付きで睨みつけた。

「あなたはもう終わりだ。こっちは、あなたが違法カジノを利用していた証拠だって掴んである!!!!逮捕状が出るのも時間の問題だ」

すると、安西の後ろから意外な人物が現れた。




「遥輝、俺はお前の復讐に利用されていただけなのか?」




俺は“彼の姿”を見て目を見開いた。


そうだ、そもそも俺が連れ去られたのは、車に乗っている人物によって、完全に油断していたからだ。






「貴之……」






俺は、会社の駐車場で1台の車と遭遇した。窓が開くとそこには貴之が乗っていて、
彼はいつものように俺に声をかけてきた。すると、俺が油断している隙に後部座席から男が降りてきて、気が付けば眠らされていた。

貴之は俺に近付いてきてこう言った。

「会社やろうって誘ってくれたのも、全部安西社長への復讐の為だったんだろ!?」

貴之は息を荒くし声を張り上げた。

「何とか言えよ!!」


違うと言いたい。



でも、




そうとも言いきれない自分がいる。







俺が独立して社長になったのには、こんな理由がある。





18歳の大学1年生の時から清香と付き合っていた俺。清香は母子家庭ということもあり、大学には進学せずに社会人となって、事務の仕事をしていた。ところが、数年経った頃から、清香の体調不良の日が続き、俺との約束をドタキャンすることも多くなって来ていた。

ドタキャンされるのは別に良い。心配なのは体調の方だ。

そのタイミングで俺は、高校の時の友人からこんな噂を聞いた。

清香はキャバクラで働いていると。

友達と一緒に、噂のあったキャバクラのお店に足を運ぶと、本当に清香がいたのだ。
その時、俺達の対応をしたのが安川峰子さんだ。当時お店では「美海」と名乗っていた。

清香は奥のVIP席で、とあるビジネスマンの男と一緒にお酒を飲み、激しいスキンシップを取っていた。見てるのが心底辛かった。

そこで俺は、峰子さんからあの人物が誰なのかを聞いた。

「安西社長よ。30にして社長だなんて、凄いわよね」

今すぐに清香の元へ行きたかったのだが、それはお店側から止められてしまった。


もちろん俺は、清香がその社長から凄く気に入られていて、何度もアフターで2人で会うような仲にまでなっているだなんて事は知らない。

アイツは、清香の心も体も自分のモノにしようとした。挙句俺は後日、

「ごめん、遥輝。別れてください」

と告げられた。

「……は?何で!?」

そしたら清香はこう言ったんだ。

「私、結婚するんだ!」

と。

「…………は?」

自分の耳を疑った。すると清香は俺にとある人物の名刺を見せてきた。

そこには「安西 眞」と記されている。

「私、この人と結婚するの!」

その名刺を見た時に、先日キャバクラに行った時に見た、安西社長と清香の2人がお店の席で寄り添い合っている所の描写がパッと蘇った。

その時ふいに俺は、

「あのお客さん?」

と零した。

「……へ?」

「ごめん。もう知ってるんだ。清香がキャバクラで働いてるの」

それを聞いて清香は目をパチクリさせて動揺していた。

「いつから働いてたの?」

「もう…1年以上前かな……」

と言った後、清香はこう続けた。

「今、お母さん……入退院を繰り返してるの。お金が必要で。でもね!眞さんが治療費も生活費も、全部養ってくれるっていうの!!こんなに良いことはないわ!!君の家庭の幸せを保証すると言ってくれたのよ!!」


清香の感覚はもう完全に狂っていた。安西に洗脳されたようになっていて、若干怖くもあった。

俺はそんな清香を元に戻したかった。

「清香、その結婚は賛成できない!!清香には俺がいるだろ!!」

俺自身も清香を取り戻したかった。

それに、出会ってそんなに年数も経ってない奴と、お金だけの、愛の無い結婚は絶対にして欲しくなかった。彼女がいつか酷く後悔すると思ったからだ。だから俺は清香の事をギュッと抱きしめ、

「俺が将来必ず清香を幸せにする!!だから結婚は待ってくれ!!!!必ず俺がその社長のように稼いで、清香ごと養っていけるような立派な男になるって約束する!!!」


と言うも、





「それっていつ?」






と、跳ね返された。

「え?」

「あなたがそうなるのはいつ??安西社長はね、会社の歴史がまだ浅いにも関わらず年商50億円を叩き出せている人よ!?遥輝がそうなれる保証がどこにあるのよ!?」

清香は完全にお金に目が眩んでいて、もう俺と付き合い続けるという選択肢は、彼女の中に全くなかった。



「世の中、好きって気持ちだけじゃどうにもならない事だってあるの…!!分かる?世の中は所詮はお金が全てなの!!!!」




清香がこんなにまで愛よりお金を選び、狂い果ててしまった事にも大きなショックを受けたが、

清香の家庭の事もちゃんと詳しくも知らなければ、お金にこんなに困っている事も知らなかった俺。清香の悩みを知ることなく結果的に1人で苦しませてしまっていたという、俺自身にもショックを受けた。



それに何より、





清香の心も体も奪っていった、安西の事が許せなかった。



後日、俺は清香の働くキャバクラ店に乗り込んでは、安西本人に声をかけて、

「清香を返せ!!!!」

と胸ぐらを掴んだ。何とかしてコイツに清香から手を引いてもらいたかった。

「お客さん!やめてください!」

当時このお店のボーイとして働いていたのが蛭間くんだ。

「はるちゃん、やめて!!」

峰子さんも止めに入ってきた。
お店は大騒動に。

頭にきた俺は、テーブルにあった水を安西にザバッとかけ、安西を殴ろうとした。

「落ち着いてください!!」

それを止めてくれたのは蛭間くんだった。

「離せ!!!」

頭に血が上った俺は、周りの言葉なんて入ってきやしない。すると安西がこう言うのだ。

「水をかける分には構わない。しかし、せっかくのスーツが台無しだ。君、弁償してくれるな?」



「は?」



蛭間くんに取り抑えられ、床に膝をついていた俺は、安西の事を引き攣った顔でガンを飛ばした。



安西は続けた。



「このスーツ、イタリア製で特注で作ったものでな、全身150万円する。君はそんな大金を今すぐ払えるのか?払えないだろ?」


そう言って安西は、俺の頭をガン!と踏み潰して来たのだ。そしてトドメにこう言われた。










「収入と、人間としてのステータスはイコールだ。俺に盾付きたければ、このスーツを弁償出来るような奴になってから言え」














それを言われて俺は何も言えなくなった。






安西はそのまま店を後にした。その場にいた清香も、タオルを用意し急いで安西の事を追った。その時俺の頭の中で、


ーー世の中、好きって気持ちだけじゃどうにもならない事だってあるの…!!分かる?世の中は所詮はお金が全てなの!!!!



清香が先日言っていた言葉が、目眩を起こしそうなくらいに酷く頭をループした。









「あ゛あああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」








その後、清香はそう経たない内に本当に安西と籍を入れた。








NEXT▷▶︎▷▶︎第10話 後編

後編は明日公開します‼️‼️
遥輝の過去の話はもう少し続きます……

最後の遥輝の叫びは、
悔しさが詰め込まれていて
心が痛くなるシーン……

次回もお楽しみに!

明日は最終回まで載せます!!

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