案内されたのは、テレビドラマに出てくる豪邸のように立派な家だった。
車を数台置けそうな、広いガレージ。ケイコの背よりも高い塀。そしてその塀の向こうには、広い庭と大きな家……。
ふわりと香るような違和感をケイコは、確かに感じた。
けれど……。
ケイコは、その違和感を飲み込んだ。
※
サエコに案内されるまま家に上がった。お金持ちの家というのは、室内の調度品まで美しい。
廊下に飾られた薔薇が、その優雅さを引き立てている。
ケイコは、その美しさに魅了されていた。
だが……。
抑えきれない、嫉妬ばかりが膨らんでゆく。
カチャリと小さな音を立て、ティーカップとソーサーが置かれる。
カップに注がれた熱い紅茶からは、独特の匂いが漂っていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。