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第16話

終・RE:スタート
43
2021/05/13 14:12
 あなたは正面玄関を出たところで段差に躓いて転んだ。
 膝にじんと痺れるような痛みが走る。擦りむいたらしい、というのは見ないでもわかった。
 ぜえぜえと息を荒くしながら肘を支えに立ち上がる。
遊城十代
遊城十代
あなたっ!
 あなたは再び走ろうとした。しかし怪我をしたほうの膝に力が入らない。その間にもぐんぐん十代とあなたの距離は縮まっていく。
 あなたは足を引きずりながら十代との距離を必死に稼ごうとした。しかし、その努力はすぐに無駄に終わった。
遊城十代
遊城十代
はあ……はあ……捕まえた
 肩に手を置かれて、あなたは固まったように動けなくなってしまった。ヒュッと息を呑む。十代はそんなあなたにいつもの笑顔を向けた後、「ごめんな」と小さく呟いた。
遊城十代
遊城十代
ビビらせちゃって、ごめん……
独占欲、出さないようにしてたんだけどな……
(なまえ)
あなた
……
遊城十代
遊城十代
あっ‼ 怪我してるじゃん! 歩けるか?
 優しいいつもの十代だった。
 体の力が抜けてへなへなとその場に崩れ落ちたあなたに「大丈夫か⁈ なあ‼」なんて焦った声をあげるのは、紛れもなくいつもの十代だった。
 結局、あなたは十代に幻想を抱いていたのだと思う。いつまでも子供のままだろうという想像はいつの間にかそうであってほしいという理想にすり替わり、そうに違いないという幻想にまで変わり果ててしまっていたのだ。その幻想が崩れたからといって、十代が十代でなかったことにはならない。

 あなたは横抱きされて保健室に運ばれながら、十代の匂いを嗅いだ。
 嗅ぎ慣れたあなたと同じ柔軟剤の匂いに隠れて、十代の汗の匂いがする。
(なまえ)
あなた
逃げたりしてごめんね、十代くん
遊城十代
遊城十代
なんで逃げたのかは聞かないけど、
やっぱりちゃんと話し合いたいな
俺が知らないあなたのこと、ちゃんと知りたいから
(なまえ)
あなた
うん、あのね──
 二人きりの保健室であなたは語り始めた。
 不安を、嫉妬を、挫折を。
 語ることに対してもう苦い感情はなかった。
 こんなに嫉妬して、独占欲に塗れて、泥臭くも愛してくれる十代になら、なにを言っても受け止めてくれると、わかっていたから──。
遊城十代
遊城十代
あははっ、そんなこと考えてたのか
心配しなくても、俺には後にも先にもあなただけだぜ
(なまえ)
あなた
わたしもだよ、十代くん

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