『お兄さんと一緒が良い!』
びっくりした。
ついさっき会ったばかりの俺と一緒に居たいって…。
辰哉「ホントに良いの…?」
『ダメ…?』
辰哉「ダメじゃないよ…。」
『でも、顔が困ってる…。』
辰哉「え?」
『ごめん、なさい…。』
困ってるんじゃない。
そうすぐに言おうと思ったけど、やっぱりどこかに戸惑っている俺がいて、すぐには言えなかった。
そしたら、あなたちゃんは苦しそうな顔をして泣いてしまった。
亮平「えっと…。あなたちゃん?大丈夫だよ?」
『ふぇっ、ふぇっ…。泣』
照「大丈夫だよ~。」
照がそう言ってあなたちゃんのことを抱きかかえた。
するとあなたちゃんは、照の胸に顔を押しつけ、声を上げて泣いてしまった。
亮平「ふっか!なんとか言いなよ!あなたちゃん、誤解してるよ?」
辰哉「分かってるって!でも…。」
亮平「でも?」
辰哉「本当に大丈夫なのかなって…。俺なんかで良いのかなって…。」
亮平「…あなたちゃんは、ふっかだから良いんでしょ?」
阿部ちゃんのその言葉を聞いて、はっとした。
あなたちゃんは、きっと今まで誰にも甘えられなくて、苦しい思いしてきて、必死で逃げてきたんだ。
人と関わるのも嫌なのかもしれないのに、俺についてきてくれた。
もし、本当に俺が良いなら…。
辰哉「あなたちゃん?」
『うっ、うっ…。』
辰哉「これから、ずっと一緒に居よ?」
『…いい、の?』
辰哉「うん。俺は、一緒に居たい。」
『嫌、じゃない…?』
辰哉「うん。」
『いらない、子じゃない…?』
辰哉「うん。あなたちゃんは、俺にとって特別だから。」
『ホント?』
辰哉「うん。だからね、これから、ずうっと一緒にいてくれませんか?」
『コクリ』
あなたちゃんは、照の腕の中で頷いた。
そんなあなたちゃんの頭を撫でると、あなたちゃんは嬉しそうな顔をした。
照「良かった…。」
亮平「そしたら、ふっかのお母さんにも伝えなきゃね…。」
辰哉「だな…。」
1階に戻ろうと思い、部屋のドアを開けると、母さんが居た。
なぜだか知らないけど、母さんは泣いていた。
辰哉「母さん!?」
母親「辰哉ぁ…。あんた、本当に良い子になったね…。泣」
辰哉「えぇ?」
母親「あなたちゃんのことよ!」
辰哉「その…。母さんはさ、認めてくれる?あなたちゃんのこと…。」
母親「勿論!あなたちゃん?これから、よろしくね?」
『んぇ?』
母親「可愛らしいわねぇ。こんなに小さい子を見たのはいつぶりかしら…。」
辰哉「俺ぶりじゃね?」すみません、妹さんはいない設定で…🙇
母親「もうそんなになるのね…。」
『お母さん?』
辰哉「ん?…そうだね、あなたちゃんのお母さんかな?」
『お母さん!!』
母親「まぁ!なんだか若返った気分…。」
辰哉「安心して、若返ってはいないから。」
母親「相変わらずの所もあるようね…😢」
亮平「アハハ😅」
照「ふっか…。笑」
辰哉「え?」
次の日、学校が休みで、仕事も入っていなかったから、区役所に行った。
何で?
そりゃ、あなたちゃんのこと知るために!
生年月日とか、本名とか、本人が覚えてないことも分かるだろうしね。
後、あなたちゃんを酷い目に遭わせてた張本人である親について、少しは知れると思ったし。
辰哉「あの、すみません。」
役所の方「はい、どうかされましたか?」
辰哉「この子のことを知りたいんですが…。」
そう言って、あなたちゃんのことを役所の人に見せると、役所の方が大きく目を見開いた。
役所の方「えっ、ちょっ…。もしかして、この子の親御さん、また何かしたんですか…?」
辰哉「また…?」
役所の方「…少しお時間をいただきたいのですが、よろしいですか?」
辰哉「はい…。」
俺とあなたちゃんは、役所の会議室みたいなところに案内された。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。