高校2年の冬。
もう夜も更け始めている。
ダンスのレッスン帰りになんとなく公園によると、子供の泣き声がした。
『うわぁ~。泣』
子供はそれなりに好きだ。
でも、泣いている子供は何を考えているのか分からないから、あんまり好んで関わらない。
でも、見て見ぬふりなんて出来なかった。
この子の泣き声は、なんだか無視したらいけない気がした。
声のする方に行くと、女の子がひとりでベンチに座っていた。
ボロボロの夏服を着て、ボサボサの髪。
お世辞にも、可愛いとは言えなかった。
でも、それを見た瞬間、目を疑った。
彼女の腕には沢山のあざがあった。
色が濃く、大きい。
おかしい、明らかにおかしい。
露出している脚にもあざがあった。
刃物の切り傷なんかも見えた。
「どうしたの?」
思い切って声をかけてみた。
すると、女の子は俺の方をゆっくりと見た。
俺を見てるんだけど、見ていない。
そんな感じがした。
『お兄さん…。助けてくれませんか…?』
寒いせいか、ろれつが回っていなかったけど、確かに聞き取れた。
助けて欲しい…?
いったい、この子に何があったんだろう…。
「何があったの…?」
『私、いらない子…?助けてくれない…?』
会話しているようでしていない。
追い詰められてしまって、会話もままならない状態なんだ…。
助けなきゃ…。
本能的にそう思った。
「とりあえず、俺の家、行く?」
気付いたら、そう言っていた。
『良いの…?』
「うん、おいで。」
俺がそう言うと、彼女は嬉しそうな顔をして立ち上がった。
…細い。
いくらなんでも、細すぎる。
立った瞬間、よろめいていたし、ひとりで歩かせるのは危険かもしれない。
「手、繋ぐ?」
『…お兄さんには、甘えても良いの?』
「うん、良いよ。出来ることはなんでもしてあげる。」
『…手、つなぎたい。』
「はい、どーぞ。」
俺が右手を差し出すと、彼女は小さな左手を上に伸ばし、俺の右手を握った。
小さな左手は冷たくて、指も手首もびっくりするぐらい細かった。
「行こっか。」
『うん!』
彼女と出会ったこの日、雪が降っていた。
どうも、作者です🙇
新作である『雪の降る日、君は一人だった。』を読んでいただきありがとうございます。
本題に入りますと、このたびInstagramを開設いたしました!
同級生のアカウントたくさんありますけど、ぜひフォローしていただけると嬉しいです。
プロフィール画面から行けると思います!
以上、作者からでした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。