前の話
一覧へ
次の話

第1話

雪の降る夜、君はひとりだった。(1話)
1,479
2023/03/10 12:48
高校2年の冬。

もう夜も更け始めている。

ダンスのレッスン帰りになんとなく公園によると、子供の泣き声がした。


『うわぁ~。泣』


子供はそれなりに好きだ。

でも、泣いている子供は何を考えているのか分からないから、あんまり好んで関わらない。

でも、見て見ぬふりなんて出来なかった。

この子の泣き声は、なんだか無視したらいけない気がした。

声のする方に行くと、女の子がひとりでベンチに座っていた。

ボロボロの夏服を着て、ボサボサの髪。

お世辞にも、可愛いとは言えなかった。

でも、それを見た瞬間、目を疑った。

彼女の腕には沢山のあざがあった。

色が濃く、大きい。

おかしい、明らかにおかしい。

露出している脚にもあざがあった。

刃物の切り傷なんかも見えた。


「どうしたの?」


思い切って声をかけてみた。

すると、女の子は俺の方をゆっくりと見た。

俺を見てるんだけど、見ていない。

そんな感じがした。


『お兄さん…。助けてくれませんか…?』


寒いせいか、ろれつが回っていなかったけど、確かに聞き取れた。

助けて欲しい…?

いったい、この子に何があったんだろう…。


「何があったの…?」

『私、いらない子…?助けてくれない…?』


会話しているようでしていない。

追い詰められてしまって、会話もままならない状態なんだ…。

助けなきゃ…。

本能的にそう思った。


「とりあえず、俺の家、行く?」


気付いたら、そう言っていた。


『良いの…?』

「うん、おいで。」

俺がそう言うと、彼女は嬉しそうな顔をして立ち上がった。

…細い。

いくらなんでも、細すぎる。

立った瞬間、よろめいていたし、ひとりで歩かせるのは危険かもしれない。

「手、繋ぐ?」

『…お兄さんには、甘えても良いの?』

「うん、良いよ。出来ることはなんでもしてあげる。」

『…手、つなぎたい。』

「はい、どーぞ。」


俺が右手を差し出すと、彼女は小さな左手を上に伸ばし、俺の右手を握った。

小さな左手は冷たくて、指も手首もびっくりするぐらい細かった。


「行こっか。」

『うん!』


彼女と出会ったこの日、雪が降っていた。
どうも、作者です🙇

新作である『雪の降る日、君は一人だった。』を読んでいただきありがとうございます。

本題に入りますと、このたびInstagramを開設いたしました!

同級生のアカウントたくさんありますけど、ぜひフォローしていただけると嬉しいです。

プロフィール画面から行けると思います!

以上、作者からでした。

プリ小説オーディオドラマ