夢の中で──私は真っ赤に染まっていた。
回りには、知らない男女が倒れていた。
そこには、黒でも白でもない、赤い猫が──。
目を開けると、窓の外は暗くなっていた。
時計を見る。
【21:34】
四分、寝過ごしてしまったようだ。
服を着替え、バッグを持つ。
髪を整えて、スマホを持った。
静かに、音をたてないように歩く。
扉を閉めて、階段を降りる。
電気は付いていない…寝ているのだろう。
玄関の扉を開けて、鍵を閉める。
息を吐き、時間を見る。
【21:36】
早く行かなければ。
葵衣はもう行っているはず。
そう考えながら歩く。
今日はやけに、夜風が冷たかった。
しばらく歩くと、命花中の校門に着いた。
大人や子供、老人など歳がバラバラな男女が集まっていた。
親が子供をこんな夜中に出すとは思えない。
私のように、気になってコッソリと抜け出してきたんだろう。
集まっている男女を見回すが、どこにも葵衣はいない。
まだ来ていないのだろうか。
【21:56】
もう時間がない。
まさか、寝てしまった?
葵衣…なんかあった訳じゃないよね。
嫌な予感、的中かもしれない。
【22:00】
とうとう、二十二時になった。
葵衣は、結局来なかった。
ギ、ギィィィィ…
校門が勝手に開いた。
誰も開けていないはずなのに。
まるで、入ってこいとでも言うように。
私より少し小さい女の子が、帰りたいと連呼している。
帰りたいのは、私も一緒だ。
だけど、入らないと…なんか、来る。
一人の男が叫んだ。
振り返ると、赤い液体で濡れている斧を持った男がいた。
顔は頭巾を被っていて見えない。
命花中を指差した。
確かに、命花は広いから、逃げられるかもしれない。
集まっていた全員が校門を通ると、また勝手に閉まった。
そして、頭巾男は消えた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。