それから師範と私は恋仲へとなった。
もちろん周りの方々には内緒で。
そして師範はいつもと変わらず
厳しい稽古をしてくれる。
恋仲になったからといい
甘くされるのは嫌だったから
すごく嬉しかった。
けど、一つだけ大きく変わったことといえば
稽古中
構えが取れず思いっきり師範の振った棒が
頭にあたり悶えていると
今まで笑ってバカにしてたくせに
過保護並みに優しくなって…
すぐ私の傍まで来て
顔を覗き込み心配してくれる
この優しさにまた胸が高鳴り
1人緊張してしまい
顔を背けてしまったら
師範は弱々しい声をだし
… 怒ってんのかァ?
なんて言ってくるから
胸が苦しいくらいキュンキュンして……
変にカタコトな喋り方をしてしまい
落としてしまった棒を手にとり
少し師範から離れ構えをとった
すると師範はポカーンとした顔をしてすぐ
ニヤリと笑い
なんて言いながらまた近寄ってくるもんだから
そういたずらに言うと
腰に腕を回され
グイッと師範の方へと引っ張られ
そう耳元で囁くもんだから
また体に電気が走るような感覚になり
思わず師範の服の裾を掴むと
そういいヒョイっと私を持ち上げ
部屋へ戻ろうとし
さすがに
稽古で汗かいてるし
そう言いながら私を縁側におろし
私の横へ座った師範。
こういう時だけ
そんな顔するのズルいですよね、本当に……
そういい立ち上がり自分の部屋へと
着替えを取りに行こうとすると
手をヒラヒラ~っとさせながら
師範も着替えを取りに行った
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!