向かった任務場所には、"何も無かった"
"何も無かった"と言うのはその言葉の通りで、
人の気配は愚か、森の木々,村の建物...全てが消し飛んでいた
ただ、強いてあると言うのならば、色濃く染み付いた血が、ありとあらゆる所にありました
その光景は言うまでもなく、惨いものでした
その中を、私と時透様のみで様子を伺いながら歩いていた
いくら酷いものだからと、躊躇っている暇など、私たちにはありません故
消し飛ばされきれずに残ってしまったその形が、その威力を物語ってもいました
一瞬、気配が濃くなったが、また元に戻ってしまった
戦場において、挑発に乗るのは阿呆のする事だと見なされています。
ですが、挑発する側からすると、ここから少しでも戦況を動かさなければ進展がなく、停戦状態に陥るのが免れないからです。
今も、それと同じです
何としても出てきて頂かなければ、時間が経つばかりで何も起こりません
すると、鬼は特に焦った様子も、憤った様子も見せることなく、ゆっくりと姿を現した
鬼は落ち着いた雰囲気を纏っており、常に冷静なようにも見えた
流石は十二鬼月と言ったところでしょう
強さも、雰囲気も、全てが底辺の鬼とは比べ物にならない
冷静さを完璧に保っていた
また、飢餓状態は愚か、無駄な感情を戦場に持ち込まないようにしているようにも見えた
私と時透様が刀を構えると、鬼も技を放つための構えをとった
そこら中に飛び散る残骸
まるで抉られたようにあいた穴
鬼の血気術は恐らく、威力のあるもの..爆発系
時透様は相手の足元に滑り込むように近づき、斜めに斬り上げた
時透様の攻撃を受けた鬼は右脚を切断されたものの、咄嗟に後方へと跳んだため、頸までは斬られなかった
地面を強く蹴り飛ばし、まだ再生しきれておらず、身動きの取れない鬼の頸へと刃を伸ばした
しかし
頸に掛けたはずの刀は、頸に当たって通らず、
ただ、カタカタと刀身を震わせていた
勢いよく振られた爪を軽く避け、
一旦鬼との距離を置く
時透様は、開けた土地を最短距離で走り、鬼との間合いを詰めようとしていた
鬼の血気術にいち早く反応し、時透様はすぐに刀を自身の前で構え、血気術を防いだ
しかし、予想以上に爆風の威力が強く、時透様は後方に飛ばされてしまった
それでも、時透様なら無事だろう、と、私はすぐに鬼の隙を作ろうと攻撃を仕掛けた
重心を低く保ち、左足を後ろに引く
そのまま前方に向けて鋭く刀を突き出す
伍ノ型を受けた鬼は、後方に勢い良く吹き飛んだ
私はすぐに走り出し、鬼との間合いを詰めた
詰めたと共に身体を大きく捻り、技を放つ
楕円を描くように、頸目掛けて切り付ける
頸にめり込んで動かない刀を、さらに奥へ差し込もうと力を入れる
私の力と相手の力が反発し、刀がカタカタと
音を立てていた
仮面を通して、鬼の目を見つめる
薄らと鬼の目に映りこんだ、小さくとも決して弱くはない人の姿
それは一瞬にして鬼の視界から消えたが、私の目にははっきりと映っていた
鬼の真上に飛び、私の刀を巻き込んで鬼の頸を斬る、時透様の姿が
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。