目を覚ますと、私は布団の中で、自室にいた
隊服から寝巻きに着替えさせられており、刀なども全て定位置に戻っていた
外の色は障子越しでは白色に見えた
恐らく、もう朝でしょう
私は無惨を追っていた
とても体が軽くて、どこまでと走っていけそうだった
しかし、その後の記憶がなかった
本能のままに体を動かしていたせいだとすぐに分かった
体が限界を迎え、とっくに私は気を失っていた
それでも尚本能は無惨を追えと指事し続け、私はそれに従った
でも、私は今こうしてここにいる
大方、どなたかが助けてくださったのでしょう...
その時初めて気が付いた
私の手を握りながら眠っている子達に
私はそっと布団から出ると、いつもの着物に着替え、布団を3人に被せた
そして、起こさぬようにと部屋を出た
退出後は真っ先に御館様のお部屋へ向かった
これ程にまで弱った兄様を見るのは、辛くて仕方がなかった
私と無惨が対峙したあの夜、無惨は既にこの屋敷の場所を把握していたでしょうから、いつ来てもおかしくはなかった
覚悟はしていました
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御館様のお部屋から退出して自室へ戻ろうと廊下の角を曲がった所、かなたの声がした
その声と共にかなたの背後から輝利哉が飛び出してきた
飛び出した輝利哉は私の元へと駆けて来た
すると、1m程手前で地面から足が離れた
私は咄嗟に両手を伸ばし、輝利哉を腕の中に抱えた
すると、私の前方からも小さくすすり泣く声が聞こえてきた
私は空いた片手を差し伸べ、2人を呼んだ
すると2人は輝利哉同様私の元に駆けて来てくれた
心配してくれるのは輝利哉だけではなかった。かなたも、くいなも、とても親身になってくれていた
3人の心は満たされるどころか、穴だらけ
だからこそ私はそれを少しでも満たしてあげたいと思っている
それなのに、こんなにも心配を掛けていては穴なんて塞がらないよね
ごめんね
口調と眼差しを変え、空気を緊張させた
その時、輝利哉は拳を握り、俯いていた
輝利哉は私に背を向け、1歩ずつ前に足を出し、準備へと向かった
その背中は私があの時抱き抱えた背中とは全く違い、とても大きく見えた
「手を繋いでもいいですか?」
「かなめ様のお側にいたいです」
そう言っていた、幼くて小さな輝利哉は、私の心の中以外にはもう存在しなかった
辛いことが重なり涙を流すことなんて何度もあった
その度に辛さと歯がいなさを胸に悔やんでいた
そんなことを1人で抱えさせてしまったことは本当に申し訳ないと思っている
けれど、輝利哉もかなたもくいなも、にちかもひなきも..誰一人としてここに弱い者はいなかった
無理ばかりさせてきた。でも、誰も何も言わずについてきてくれた。本当に、ありがとう。
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月が昇った
屋敷は爆ぜ、産屋敷は華麗に散った
3人の子供と1人の剣士を残して
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。