ひねくれた心へと落ちぶれてしまった彼には、素直な言葉すらもう届かなかった
遠くから聞こえた言葉
善逸さんのお耳はどのような音も拾うことができると仰っていました
時には寝ている間に聞こえた音すらも拾ってしまい、気味悪がられたこともあると仰っていました
しかし、私は彼の聴力は大変素晴らしいと思います
きっと、炭治郎さんだってそう善逸さんに言っていたはずです
炭治郎さんは安心感が擬人化したようなお人ですから、皆さん、彼が大好きです
だからでしょうか、私も..
そのお言葉を聞いて、とても、安堵していた
少し先に転がる刀を勢い良く握り、
私はまた暁を駆けた
漂う戦慄と耐えぬ不穏に、皆が顔を顰めた
しかし、ここにいる全員が、諦めるという行為を取ることはないのです
目的を果たすためなら自らの命を賭して抗う
意志を伝えることを知らぬ赤ん坊のように、隊士達はただ、剣を振って苦しみを断ち切ってきた
鋭い一撃で無惨を壁に固定した
抗う無惨は、触手を食い意地を張った猛獣のように乱暴に振るった
近付く足音
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
開けた道
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
谷の間から向けられた、天を照らす光
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
例えこの腕が消えようと逃すまいと握られた1本の刀と2つの拳
激しい光で体が空中に投げ出されても、彼は離そうとしなかった
醜い姿へと変貌した無惨は、炭治郎さんを巻き込み、防御に徹した
さらに、陽光から逃げようと必死に地面を這いつくばって影の道へ戻ろうとしていた
この状況でも諦めぬその精神だけは認めてあげてもいいでしょうか
待ち構えていたかのように現れた隠の皆さん
恐らく、御館様の采配
彼らは建物の上から無惨に向けて物を放った
車を動かし、自らの体と共に突進した
1人、また1人と隊士も集結し、残る気力全てを力に変換させて無惨の進行を食い止めた
全体の状況を良い方に持って行けるよう指示するのが御館様なら、その場を指揮するのは柱
しかし、現在柱の方々には攻撃に徹して頂きたいので、私が代理を務めさせて頂いています
余力を頼りに、私は舞を続けた
攻撃を入れても入れても肉片が崩れるだけで、本体は現れなかった
しかし、無惨の気配は段々と薄くなっていた
そして
希望が叶う時が来た
肉片が全て消え去り、そこは確かに無となっていた
握っていた刀が身震いで酷く震え、全身の緊張が一気に解けた
涙腺が緩み、今にも涙が出そうだった
目のふちに溜まった雫が眩い太陽に照らされていた
この気持ちを何かに例えることが出来たとしても、私は公言せずに閉まっておきたい
next
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。