第61話

56話
1,132
2021/01/07 02:27
産屋敷 かなめ
ッ!
産屋敷 かなめ
はぁ..はぁ...ッ
最近、良く夢を見るのです

その夢は、特に誰も現れず、ただ、暗闇が広がっているだけです

でも、確かに感じるあの感覚..頭から足先まで、身体全体で拒絶反応を起こしてしまう程、凶悪で憎い感覚...
産屋敷 かなめ
もう、嫌だ..ッ
苦しい過去とわびしい未来が頭の中で映像のように流れた
映像が流れる度に頭痛が襲い、混乱で崩れたホルモンで、涙腺が緩み、出したくもない涙が溢れ出る
苦しい気持ちに全感情が押し潰されそうで、とても怖かった
産屋敷 かなめ
(こんなことで根を上げていてはダメ..いつも通りに、平然としてなければ..)
そうしていれば、感情を偽れると思っていた
産屋敷 かなめ
..まだ4時...
たまには早起きも悪くないわね
気分転換にもなるだろう、と私は布団から出た

部屋から出ると、まだ誰も起床しておらず、御屋敷内は静まり返っていた

朝日が山と山の間から顔を出し、光を届けてくれていた
その朝日に照らされる御屋敷は、良く手入れされている花々が美しく光っていて、とても美しかった
産屋敷 かなめ
あなた達は、誰にも負けないで、強くさき続けてね(ニコッ
つい、花達に話しかけてしまった
でも、恥ずかしさはなかった
産屋敷 かなめ
....お腹が空いたわ..
台所に移動し、何か作ろうと試みたものの、普段台所に立たないため、道具の場所や使い方、食料の場所など、何も分からなかった
産屋敷 かなめ
(この引き出しの中、何か入ってないかしら..)
まるでこそ泥のように引き出しを開け、中を物色していた
産屋敷 かなめ
ッ!お煎餅..
産屋敷 かなめ
(誰も見ていないわよね..ッ)
と、周りをキョロキョロ見渡して、私はお煎餅を口へと運んだ
お煎餅ならではの「バリッ」と言う音が大きくなり、一度驚いたものの、私は気にせず食べた
産屋敷 かなめ
ッ✨
産屋敷 かなめ
(しょう油が香ばしく、絶妙なバランスを保っていてとても美味しい..ッ✨)
産屋敷 かなめ
(で、でも、1枚にしておきましょう..バレてしまってはいけませんから..)
空腹を紛らわすことに成功し、満足して台所を出ようとした時、どうも後ろの襖から鋭い視線を感じた
このまま振り返るのはまずい、と本能で悟り、私は別の扉から退出しようとゆっくり足を進めた
産屋敷 かなめ
(き、気の所為でありますように...)
しかし、無駄な祈りは通じず
産屋敷輝利哉
かなめ様...
産屋敷 かなめ
(ビクッ
産屋敷 かなめ
お、おはよう、輝利哉(ニコッ
産屋敷 かなめ
いつもこの時間に起床しているのかしら
輝利哉は偉いわね
産屋敷輝利哉
いえ、厠に行ったところ、台所から「バリッ」という音がなったのでこちらに向かっただけです
産屋敷輝利哉
すると、かなめ様がいらっしゃいました
産屋敷 かなめ
そう..私も、その「バリッ」という音を聞きつけて台所に来たのよ
産屋敷輝利哉
嘘、ですよね、かなめ様
産屋敷 かなめ
さ、さぁ..
あからさまに視線を逸らした私は、輝利哉の視線に気付き、逃げようがないことをした悟った
産屋敷 かなめ
..ダメ?
産屋敷輝利哉
ダメです
産屋敷 かなめ
..ごめんなさい....
産屋敷輝利哉
今度からはしちゃダメですよ?
産屋敷 かなめ
えぇ、肝に銘じるわ
産屋敷輝利哉
それにしても..かなめ様こそ、本日はお早いのですね
ご準備も完璧で..
産屋敷 かなめ
ぁ..少し目が覚めてしまって
たまには早起きもいいと思ってね
産屋敷輝利哉
なるほど..
産屋敷 かなめ
でも、一度部屋に戻るわ
昨夜やり残していることがあったの
産屋敷輝利哉
左様ですか
では、私ももう一度部屋に戻ります
産屋敷 かなめ
えぇ
2人で台所を出ると、それぞれの部屋に戻った
帰る途中、自分はちゃんと笑えていただろうか、とか、変ではなかっただろうか、などと考えていた


普通にしていれば大丈夫。

そうも一度心の中で唱えた








産屋敷輝利哉
(かなめ様、いつもより笑顔が少なかった..それに、少し疲れているような...朝のせい、でしょうか..)





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