第30話

28話
2,274
2020/07/12 11:08
頸目掛けて振ったはずの刀は、まるで元からそこに何も無かったかのように空気を掠めた
産屋敷 かなめ
ッ!速い...ッ
産屋敷 かなめ
ならば
産屋敷 かなめ
参ノ型 須佐之男・乱舞!!
産屋敷 かなめ
(広範囲なら..ッ)
上弦の壱 黒死牟
振りが甘い
上弦の壱は、広範囲の攻撃ですら振りが甘いと言い、宙に高く飛び、避けた
上弦の壱 黒死牟
もう分かっただろう
お前では私には勝てぬ
上弦の壱 黒死牟
抵抗を辞め、大人しく着いてきたならば、傷は与えぬ
産屋敷 かなめ
傷など、いくら付いても構いません!
上弦の壱 黒死牟
愚者め
産屋敷 かなめ
なんとでも言ってください..
私が逃げる理由なんて、作るのは不可能なことですから
上弦の壱 黒死牟
このまま産屋敷の者共を殲滅すると言ってもか
産屋敷 かなめ
ッ!
いえ、冷静に考えれば、まず御屋敷を見つけること自体が不可能に近いのです..

これは嘘。

安易に信じてはならない.....!
産屋敷 かなめ
虚辞を連ねないでください!
上弦の壱 黒死牟
ここでお前が敗れるのは紛うことなきこと
産屋敷 かなめ
そんなこと、私が1番分かっています!!
けれど、これは私が逃げる理由にもならなければ、ヤケになる理由にもならない
産屋敷 かなめ
それは私が、
産屋敷 かなめ
臆病な私を殺す理由!
上弦の壱 黒死牟
ふっ..
上弦の壱 黒死牟
このような気持ちは初めてだ
上弦の壱 黒死牟
産屋敷の者..いや、
上弦の壱 黒死牟
産屋敷かなめよ
上弦の壱 黒死牟
お前は曲げぬ意志を持っているか
産屋敷 かなめ
もちろんです
産屋敷 かなめ
それが私を形成する糧なのですから
上弦の壱 黒死牟
いいだろう、産屋敷の屋敷も襲わぬ
お前も殺さぬ
上弦の壱 黒死牟
私の名は黒死牟
産屋敷かなめよ
上弦の壱 黒死牟
己の力のみで私を防いでみせよ
産屋敷 かなめ
望むところです
私は溢れる感情を殺し、刃を真っ直ぐと向けた

剣先まで入れた力を揺らがぬよう、両手で支えると、地面を強く蹴りあげた
産屋敷 かなめ
肆ノ型 天照大御神
空中で体を捻り、刀で弧を描く

描かれた弧はやがて円となり、相手の体を刻む
産屋敷 かなめ
お覚悟(ニコッ
上弦の壱 黒死牟
ッ!
上弦の壱 黒死牟
(この状況で笑みを..いや、気配がまた変わっている)
天照大御神とは天界を司る全ての母のような神

その暖かい眼差しは罪人にも向けられる



だからでしょうか、この型を使うと、憐れみの仮面を自身に貼り付ける
上弦の壱 黒死牟
(面白い呼吸を使う娘だ..あのお方も気に入ることだろう)
黒死牟はまたもや私の攻撃を避け、私の視界の端に移動した
すぐに視線を移すが、その先に黒死牟はいない
産屋敷 かなめ
(動きが全く読めない..反応できても、体が動かない..ッ)
呼吸を深め、全ての感覚神経を研ぎ澄ます
流石は上弦の鬼、気配を完璧に隠している
だけど、強すぎるその重い気だけは、まだ微かに感じとれた

8時の方向...上
産屋敷 かなめ
伍ノ型 自然崇拝の巫女...
鬼の体に視線を固定し、技を繰り出す

以前悲鳴嶼様にご指定していただいた通り、強く踏み込んだ
だけど...
上弦の壱 黒死牟
まだ柱にも私にも及ばぬが、久しぶりに面白い戦いができた
上弦の壱 黒死牟
夜明けも近い故、そろそろ終わらせて頂こう
その声がした頃には、私の首筋に激痛が走っていた
まるで機械のように、全ての機能が停止してしまう感覚でした
広がっていた景色が一気に暗くなり、力が抜ける
産屋敷 かなめ
そん、な....ッ



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