嬉しい
安心
感動
そんな幸せの感情が渦巻いている景色は、皆の望んでいた未来です
それが今、現実となった
疲れたという感情すらも吹き飛ばしてしまいそうな程に安堵しきった私達は、皆、自然と笑みを浮かべていました
しかし、決して被害がなかった訳では無いことを忘れてはいけません
この未来を現実にするために、どれだけの犠牲が払われたかは、言うまでもありません
私はとりあえず心を落ち着かせようと、落とした刀を鞘に戻した
そんな中、1人膝をつき、俯く少年を見つけた
私は静かに少年の元に寄った
少年の周りには数名の隊士と隠がいた
彼はとても優しくて、周りからも信頼があった
名は、竈門炭治郎
彼は最後、無惨の肉片に巻き込まれてしまった
私は尚も生存を期待していましたが、、
その瞬間、炭治郎さんは動いた
しかし、その動きは確かに、命を狙っていました
予想はいくつか立てられました
壱:無惨の攻撃により、一時的なパニック状態に陥っている
弐:疲労が最大まで蓄積され、理性が飛んだ
参:あの肉片の中で、無惨に何かを施された
....あまり考えたくはありませんが、私が1番有力だと思ったのは最後の考えです
そして、その何かというのは....
鬼の始祖は散った
・しかし、その忌々しい血は次の王へと継承された
選択肢は2つ
ー鬼を人に戻す薬を打つ
ー炭治郎さんを討つ
できれば..いや、絶対に彼を手にかけたくはない
・必ず救う
鋭く光る剣士
細く長い同行
顔の広範囲を覆う痣
鋭利な爪
・一目瞭然、誰もが彼を鬼だと判断できた
しかし、信じることは出来ませんでした
炭治郎さんの間合いにいらっしゃった隠の方を助けようとした瞬間、陽光が炭治郎さんを照らした
陽光は鬼の弱点の1つ
ですから、炭治郎さんの身は日に晒されている限り崩壊を続けた
咄嗟に場の指揮権を握ったのは冨岡様でした
彼は炭治郎さんを鬼殺隊に導いた隊士でもあり、彼にとっても炭治郎さんは特別な存在でした
しかし、彼は心の奥に蓋をしたのです
"炭治郎が鬼にされた、太陽の下に固定し焼き殺す"
"人を殺す前に炭治郎を殺せ!!"
この選択が彼にとってどれだけ苦だったでしょうか
すぐに戦闘が始まった
しかし、直後
「...ピタッ」
炭治郎さんの陽光灼けが突如停止した
これが表す事態は1つ
"陽光を克服した"ということ
・全く前例がない
ただでさえ太陽の克服は今までに禰豆子さんにしか確認できなかったと言うのに、ここまでの速さでの克服は経験し得なかったことでした
私はその瞬間、思考が停止した
尚も炭治郎さんは陽光の下で暴れ回っていた
疲弊した隊士が徐々に起き上がり、加勢して行った
しかし、誰一人として歯が立たなかった
やがて禰豆子さんも到着した
でも、私の目にはその光景が写っているだけで、
・何も分からなかった
声は聞こえた
しかし、何も考えられなかった
あらゆる選択が無効化され、為す術がなかった
でも
炭治郎さんの攻撃を止めるため、禰豆子さんは兄の元へと駆け寄り、抱き締めた
それにより炭治郎さんの攻撃は一瞬止んだように見えたが、再開されてしまった
我ながら全く哀れだと思った
ただの戯言
思いついた事を口に出したに過ぎなかった
皆、炭治郎さんの攻撃を防いだ
体の至る所が痛くても、呼吸が続かなくなっても、一心不乱に攻撃を受け止めた
彼の感情一つ一つを漏らさぬように、と
皆、彼へ言葉をかけ続けた
私はその薬が鬼を人に戻す薬だと予想しています
確証はありませんが、今はその可能性に賭けたかった
私は必死に周りを見渡し、薬の類が落ちていないか探した
その瞬間、私は視界の隅を横切るカナヲの姿を見た
その手には木箱が握られていた
「彼岸主眼は、相手の動きを通して、攻撃を掻い潜ることができる。姉さんが言うには、目は繊細だから、私が使うと失明しちゃうかもしれないんだって。」
そうカナヲは花の呼吸について話してくれました
まだ鬼になってから時間が経っていないから、カナヲなら炭治郎さんの動きを読み取り、掻い潜ることができる
胡蝶様、カナヲを信じてくれてありがとうございます
・
・
・
重い瞼を開くと、青い空が光っていた
薄らと視界の隅に映るは、幾多もの死線を共に潜り抜け、朝を勝ち取った仲間
皆が涙を流し、眩い笑顔を咲かせていた
その名を呼ぶことで、彼の生をみんなで確認した
\\ 戻ったぁぁぁあああっっ!!! //
涙溢れる者
安堵する者
強がる者
この場所一体が、美しい感情で溢れかえっていた
無惨討伐完了
任務遂行
next
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。