第32話

30話
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2020/07/26 03:38
気が付けば、腹部に強い痛みが走っていた。
喉から漏れるけたたましい叫び

目からは熱い雫が床に零れ落ちる
鬼舞辻無惨
あと少し待てば、この傷も痛みもなくなるだろう
産屋敷 かなめ
ウグッ...
嗚咽をこらえるのに精一杯で、反論すら出来なかった


体内に流れ込む無惨の血が、まるで私を私でなくしてしまうようでとても怖かった
鬼舞辻無惨
そして、しばらくすれば鬼となるだろう
鬼舞辻無惨
そうすれば、晴れて貴様も産屋敷の裏切り者だ
産屋敷 かなめ
いや、だ...ッ
やっと絞り出せた声も、小さく、とても弱々しかった

輝利哉達は私を慕ってくれた、けれど..こんな姿、、情けない..ッ
無惨の手が首から離れ、呼吸がずっと楽になった。

その後すぐに壊したはずの琵琶の音が鳴り、無惨が目の前から消えた。いや、私が移動したんだ
産屋敷 かなめ
けほっごほっ..ッ
産屋敷 かなめ
はぁ、はぁ...
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
凛(鎹鴉)
御館様!カナメカラ応援要請ダヨ!
凛(鎹鴉)
カナメノ予想ダト、上弦ノ鬼ノヨウダヨ!
産屋敷耀哉
それは本当かい?
なら、柱を向かわせなければいけないようだね..今手の空いている柱はいるかな
産屋敷にちか
甘露寺様、冨岡様の2名はいつでも出動可能です。
そのうち、甘露寺様はこちらにいらしております
産屋敷耀哉
なら、蜜璃を向かわせよう。それに続いて義勇にも呼びかけておいてくれるかな
産屋敷にちか
畏まりました
産屋敷耀哉
凛、蜜璃と一緒にかなめの元に行ってくれるかな
凛(鎹鴉)
ハイヨ!
かなめからの応援要請に、御館様は迅速に指揮を執る。

そして、指示の通り、凛は恋柱の甘露寺蜜璃を連れてかなめのいる場所に向かった
甘露寺蜜璃
かなめ様が心配だわ...急がなきゃ!
凛(鎹鴉)
コッチダヨ!
甘露寺蜜璃
えぇ!
凛の誘導で、かなめが凛に要請を頼んだ場所に辿り着いた。

けれど、そこにはかなめの影も形もなければ、鬼の姿もなかった

ただ、木々の隙間から金色に光る月だけがあった
甘露寺蜜璃
い、移動しちゃったのかしら...
でも、それにしては痕跡がないわ..
凛(鎹鴉)
カナメ!カナメ!イルナラ返事シナ!
いつもは司令を放ったらかしで居眠りしたり、かなめに対して敬意を持っていない凛。

だけど、そんな凛が、他の誰よりもかなめを信頼していたのだ
凛(鎹鴉)
ッ!
そして、何かを見つけた凛は羽を閉じ、それを嘴で拾った
甘露寺蜜璃
凛ちゃん!それって...
凛(鎹鴉)
カナメノ髪飾リダ...
かなめがいつも付けている藤の髪飾り。
それはかなめと御館様の父、奏和様からの頂き物。

生活力はないかもしれない、けれど、
彼女がそれをこんなにも無造作に地面に放ったらかしにするはずがなかった。
甘露寺蜜璃
ッ.....大丈夫よ!かなめ様は、きっと無事よ!
凛(鎹鴉)
ドウシテ分カルンダイ?
甘露寺蜜璃
えっと..そう言われちゃうと自信がないけど、かなめ様はとても強いんだから!
だから..だからねッ
絶対に戻ってくるわ!
凛(鎹鴉)
....アァ、私モカナメヲ信ジルサ
少ない痕跡。
無造作に落ちている髪飾り。
影も形も無いかなめの姿。

現時点で、かなめは連れ去られたと考えられた
???
遅れて済まない
甘露寺蜜璃
ッ!冨岡さん!
冨岡義勇
もう、戦いは終わってしまったか
甘露寺蜜璃
それが、かなめ様も鬼もいなくて...
冨岡義勇
冨岡義勇
それはつまり、
凛(鎹鴉)
カナメガ攫ワレチマッタノサ
遅れて到着した水柱の冨岡義勇に、現時点での推測を伝えた
冨岡義勇
.....攫われたということは、殺しはしないだろう
目的もなく攫うことなどない。
だから、その目的のためにかなめを殺すはずがないからだ
凛(鎹鴉)
ソレヨリモダ!速クカナメノ救出ニ行カナキャイケナイノサ!
甘露寺蜜璃
その気持ちも山々だけれど、まずは御館様に相談しなくちゃ..
凛(鎹鴉)
ダケド!
冨岡義勇
後先考えずに向かっても、今の状況では返り討ちになるだけでなく、相手の思うつぼだ
凛(鎹鴉)
ソ、ソウカイ..
この時、皆の心には1つの思いがあった。

相手が産屋敷のかなめだからではなく、1人の仲間だったからこそ、"必ず救う"そう思えた


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