愈史郎の活躍により、無惨が城の外へ出た
想定の位置から大きくズレてしまったが、無惨を相手に結果的に外に出す事に成功しているので、ひとまず第1段階はこちらの勝利と言えるでしょう
城から空中に投げられるように放出された隊士の皆も、無惨の元へと集結し、第2ラウンドが開始されようとしていた
夜明けまで残り1時間半
この数字が、柱を始めとする鬼殺隊士全員に多大なる負荷をかけていた
精神力や戦闘技術など、多くの技量を持つ柱ですら、体力の限界を感じながらも必死に戦っていた
さらに次の瞬間、攻撃を避けたはずの甘露寺の体が何かに引っ張られるように止まり、体を割いた
誰もが必死だった
我が身を犠牲にしてでも無惨に打ち込み、傷を増やしていった
飛び散る鮮血を目の当たりにしてもなお絶望せず、ただひたすらに剣を振った
悲痛の叫びが響いた
それと同時に、閉ざされた傷が顕になり、決意の眼差しが開かれた
この先で未来を決める戦闘が行われているのを知らぬ一般市民の立ち入りを防ぐため、隠もまた必死に通行止めの呼び掛けを行っていた
ここを通る=死へ近付くことを意味していたからだ
しかしその時
「すみません」
隠の制止を聞き入れることなく、真っ直ぐに戦場へ駆ける1人の少女がいた
少女はただ一言だけを発し、その場を後にした
少女は一心不乱に走っていた
前方に見えるのは長い髪を揺らしながら隊士を屠る
醜き仇
鞘に収納されている刀に手をかけ、前傾姿勢で走り続けた
愈史郎の目隠しの術を用いて、戦場に数名の隊士が到着した
我妻善逸
嘴平伊之助
栗花落カナヲ
の3名だ
これにより、戦況は揺らいだかと思われたが、衰えを知らぬ無惨の攻撃は増すばかりだった
刀身を赫く染めるには、万力の力がいると思われる
それを行った伊黒の剣技は無惨の再生を遅らせた
また、強制的に赫く染めた者の攻撃も、微力ながらにその効力を発揮していた
願いは届くのか..それはまだ誰にも分からなかった
皆が焦りの色を見せた時を、無惨は狙っていた
触手には力が込められ、この中で最も技量があると思われる男を潰しにかかっていた
自身の身の危機を察知したも、時すでに遅し
体の回転も、腕の動作も間に合わないと悟った
しかし、男の視界の端に、とある少女が映りこんだ
狐の面をつけ、高い位置で結われた髪を揺らす、1人の少女
現れたのは産屋敷かなめ
元鬼殺隊統率者産屋敷耀哉の妹であり、一族で唯一刀を振るう女剣士
無惨の攻撃を喰らってしまえば、途端に体に大量の血が流れ込む
無論、到底人間には耐えられぬ量です
ですが、私には無意味です
慢心するつもりはありませんが、現時点でこれはこの場を一転させる力があります
利用しない訳がありません
その瞬間、体は既に無惨の元から離れた所に吹き飛ばされていて、目視などできなかった
凄まじい破裂音が遅れてやってきた
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。