そんなこと、ずっと前から知っています
お前になんか言われなくても、知っています
柱の皆様には到底及ばぬ"力"や"心"
何もかもが劣っていました
でも..
背中を押す皆様の存在を胸に灯し、刀を握る
もう、離さない
悪を滅する刀を、想いを
その時、私の中で何かが崩れる音がした
それは誰にも見えない、とても小さなもの
しかし、私にとっては大きく脅威だったもの
もう何も恐いものはないはずです
だから..ッ
抗え..!
無惨は逃げた
私に背を向け、大きく光る月の元へと走り出した
とても体が軽かった
視界も開けていた
縛りから解放され、解き放たれた感覚だった
今なら無惨を追える
そう確信に浸っていた
また、先程と同じ攻撃でした
それをまた喰らってしまった
少し自惚れていたのだと、その時初めて気が付いた
私の体はまた地面へと引っ張られていき、視界までもが暗くなっていた
また、目の前のものを見逃そうとしていた
それは絶対に駄目なのです
倒れる寸前に両腕を地面に伸ばし、体を前方に大きく倒し、両手で地面を押し上げる
その勢いで体は前方にひっくり返った
頭から着地せぬよう更に勢いを強め、足から着地する
着地したと同時に地面を蹴り、いっきに速度を上げる
体温が上昇し、心拍数もどんどん速くなっていった
視界が開け、体がうんと軽く思えた
呼吸も安定していて、とても楽だった
今なら出せるはずです...
痣を
その時の私には、凛が何を言っているのか分からなかった
一心不乱に無惨を追い、討つことしか頭になかった
呼吸よりも、自分よりも、何よりも
無惨を追うことに全振りしてしまっていた
無惨を追う私の視界の中に、何かが入ってきた
体は何かに掴まれているのか、動かなかった
次第に視界も暗くなり、体の力も抜けていった
全ての反動が重なり、私は意識を手放した
・
・
・
弱りきった御館様の言葉は、途切れ途切れになり、吐息に混じって掠れてもいた
かなめの鴉、凛の情報によると、
異変の調査のため森へ出向いたかなめ様は、そこで無惨と出会った
無惨と一対一で勝つ確率は無に等しいと判断したかなめは、無惨を追い返すことに専念
その中で、かなめの中で何かが覚醒し、かなめの中に流れていた無惨の細胞が完全に死滅
かなめはここで無惨の血と細胞を克服したとのこと
その後のかなめの動きは以前よりも格段に良くなり、痣の発現寸前にまで覚醒した
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。