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第1話

出会い
1,757
2019/02/10 12:22
あなた、大学生。

ただいま、大ピンチです。



…事の発端は10分前。

大学のレポート提出で遅くなり、急いで帰っていた最中だった。
ねぇ、君、僕とお茶しない?
急に、全身黒ずくめの男の人が、声を掛けてきた。
あなた

い、いえ、遠慮しておきます

急いでいたし、知らない人だったから、断った。

…でも、その人は諦めが悪くて。
いいじゃん、ちょっとだけ!ね?
そう言って、腕をグイッと引っ張ってくる男の人。
あなた

や、やだ、やめてください!

私は一か八かで男の人に体当たりして、全速力で逃げた。



…逃げ切れた、かな。



周りを見渡してもあの男の人はいなかった。

私はホッとして、少しその場所で立ち止まっていた。

すると…
つーかまーえた!
気がつくと、私はさっきの男の人に腕を掴まれていた。
あなた

離してくださいっ…!

そう言って抵抗したが、離してくれる訳もなく。



…冒頭に至る。



怖い、嫌だ、誰か…誰か助けて!!
ギュッと目を瞑った、その時。
??
ちょっとオニーサン、そんなか弱い女の子に何しようとしてんの?
ふと、腕が楽になった。

目を開けてみると、さっきの男の人の腕を、別の男の人が掴んでいた。
くっ…
そう言うと、男の人は逃げていった。

私は腰が抜けて、その場にペタンと座り込んだ。
??
君、大丈夫だった?
…って腰抜けてるじゃん!
あなた

大丈夫…です…
少しすれば、立てると思いますから…

??
いやいや、心配だから!
こーんな可愛い女の子1人置いていく男がどこにいんの!
あなた

…ありがとう、ございます

男の人は、私が落ち着くまで傍にいてくれた。

…少しして、私に手を差し伸べてくれる男の人。

私はその手を遠慮がちに取った。
??
よっこいしょ…っと
あなた

ありがとうございます…

??
そういえば君、どうしてこんな夜遅くに1人で出歩いてんの?最近の世の中物騒なのに
あなた

あ、えっと…

??
てか立ち話も何だしどっか入ろーぜ!時間大丈夫?
あなた

え?あ、はい…

完全に男の人のペースに乗せられてる…

こういう性格が駄目なんだよなぁ…
??
じゃあ行こ!
男の人は私の手を取って歩みを進めていった。



───────喫茶店。
??
まだ名乗ってなかったね。俺はキヨ!
そう言うと、男の人───キヨさんは白い歯を見せてニカッと笑った。
あなた

わ、私はあなたです。あの…先ほどはありがとうございました

キヨ
いーっていーって!何もされてないみたいでよかった!
…いい人だなぁ。
キヨ
で、何でこんな時間に1人でいたの?
あなた

あ、それは…

私は今までの経緯を事細かに説明した。
キヨ
ほんほん、なるほど。そりゃあ怖かったなー
あなた

はい…だからキヨさんが助けてくださって、本当に感謝してます

キヨ
まぁ、何はともあれ!次からは気ぃ付けろよ?
あなた

はい。あの、お礼を…

ここまでお世話になって、お礼しない訳にはいかないもんね!
キヨ
お礼?いーよいーよ、気にしないで!
あなた

でも…!

爛々とした目でキヨさんを見つめる。
キヨ
…わかった。でも、今は思いつかないから、また今度…ね?
あなた

…!はい!

それから私たちは連絡先を交換した。
キヨ
ねぇ、あなたちゃん。俺、家まで送ってこーか?
あなた

え…!だ、大丈夫です!

キヨ
…でも、さっきの事もあるしさ。やっぱ送ってくわ。家どっち?
あなた

…ありがとうございます。私の家、あっちです

キヨ
よし、行こーか
再び私の手を取るキヨさん。

キヨさんの手は、少し汗ばんでいて。

…男の人の手って、こんなにゴツゴツしてるんだな。

ちょっぴり胸を高鳴らせながら、私は足を進めていった。



───────あなた宅
あなた

あのっ…!今日は本当に、ありがとうございました…!

キヨ
何回言うのw
あなた

だって…

キヨ
ははwあなたちゃんって面白いなw
あなた

お、面白い!?

キヨ
じょーだんじょーだんww…じゃ、また今度な。連絡、待ってっから!
あなた

はい!また、今度!

…その日私は、何だかふわふわしたような気持ちで眠りについた。

この気持ちの答えを、私はまだ知らない。

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