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授業が終わると、孝支が教科書を返しにきてくれた。
「これ、ありがと」
渡された教科書を見ると、使ったところに付箋が付いている。
「何この付箋、」
「後でちゃんと見ろよ?笑」
そう言って笑う孝支はやっぱりかっこいい。
…こうやって誰にでも優しくするから皆にモテるんだろうなぁ、
なんて思ってしまう。
「なんで旭に借りなかったの」
「だからあなたのがいいって言ってんじゃん」
私の頭をポンポン、と2回ほど軽く叩くと思わず頬が緩んでしまう。
「…期待しちゃうじゃん」
思わず出てしまった言葉。
ハッと口を噤むと、
「いいよ、期待しても」
と孝支は小さく呟いた。
「え…」
呆然としているうちに、孝支は何も言わずに教室に戻って行った。
…頭が追いつかない。
付箋が付いている教科書をひらくと、殴り書きの字で落書きがされていた。
付箋に書くところが孝支らしい。
私はその付箋を取り、ファイルの中にしまった。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。