.
.
春の陽気で思わずあくびが出てしまう。
時計を見るとあと5分で大っ嫌いな数学の授業が終わる。
ふっと気が緩んで外を眺めていると
歩いてきた先生がプリントで頭を軽く叩いてきた。
「ちゃんと集中しろー」
「…すみません」
後ろの席だからバレないと思ったのに…
友達の方をちらっと見ると目が合って笑われてしまった。
…もっと数学嫌いになった。
______________________________
「終わったああああああ」
終了のチャイムが鳴ると同時に友達の所へ駆け寄る。
「あなた、先生に怒られてたね笑」
「あれは怒られたんじゃなくて注意されたの!」
なんてくだらない事で言い合いをしていると、
どこからか、名前を呼ばれた気がした。
「あなた!」
教室のドアをみると、少し汗をかいた孝支がいる。
「えっ、どうしたの」
「社会の教科書貸してよ」
と、ちょっと申し訳なさそうに言う孝支の後ろには大地が立っている。
「旭に借りればいいじゃん、クラス隣なんだし」
4組なのにわざわざ1組まで来る意味…。
「あなたのがいい」
目をじっと見つめながら言う孝支は、いつもと違った。
「え、」
「はやくーーーー」
なんなんだこの人…。
後ろの大地を見ると少しにやけている。
恥ずかしさを隠すために小走りで机に向かい、貰ったばっかりの教科書をとる。
「汚さないでよ」
「任せといて笑」
そう言って教科書を受け取り、走りながら教室へ戻って行った。
「菅原くん絶対あなたのこと好きじゃん」
「なわけないって…」
…両想いだったらとっくに告白してるし。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。