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「…進路先、決まんなくて」
俯きながらそう喋ると、
「まあまだ実感なんて湧かないよな」
と共感してくれる孝支。
私より背の高い孝支を見上げると、首にかけてあるタオルで汗を拭いていた。
…バレー部、大変そうだなぁ。
そう思うと同時に、孝支がモテる理由も分かる気がしてきた。
きっと私の事なんか眼中にも入ってないけど…多分。
「じゃあな!!あなた!!」
急に肩を叩かれたと思ったら、隣の席の男子が私の横を走りながら通りすぎて行った。
「あ、うん、ばいばい!」
その男子は孝支の次に仲良くて、色々相談とか乗ってくれて、とっても優しい。
「…なに、彼氏?」
「なわけないじゃん、馬鹿なの?笑」
…少しだけ孝支の機嫌が悪くなったような気がした。
「えなに、嫉妬?笑」
と冗談で言ったつもりなのに、
「うん、嫉妬した」
とさりげなく孝支は呟いた。
こういうこと言われると調子狂う…。
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孝支と歩いていると家に着くまでが早くて、まだ一緒にいたいな、なんて思ってしまう。
「また明日な」
そう言う孝支は、少し寂しそうな顔をしている。
…もう1年も片想いしてるなんて、やだ。
「すき」
いつの間にか出ていた言葉。
はっと口を噤むと、孝支はおどろいたような顔をしている。
「っごめ、なんでもない、」
ああああもうなにやってんの…。
私は恥ずかしさを抑えきれなくて、孝支の返事を聞く前に家の中に入ってしまった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。