試験二十九日目
《JUNGKOOK視点》
スタッフ}傘を使っての撮影になります。テーマとしては『青い涙』をイメージして下さい。
お世話になってるカメラマンさんなんだけど、独創的というか難しいイメージを求められるから、いつも悩むんだよね。
BTS}よろしくお願いしますペコリ
スタッフ}もう1時間ほどで始めます。
RM}ほら〜、着替えて下さいよ。テヒョンも凪紗の手を離しなさーい。
V}え〜。
JーHOPE}毎回遅れてるのはどこの誰?
凪紗}また後でお話しましょうね(笑)
JUNGKOOK}もう着替え終わったから、俺と話そ!
凪紗}はい。
V}取るなぁー!
JUNGKOOK}}無視無視っと。
JUNGKOOK}凪紗はこの期間が終わったら日本に戻るの?
凪紗}それは…事務所の方と相談して決めます。
JUNGKOOK}凪紗はどうしたい?
凪紗}私ですか…私、、は韓国で生活したいと思っています。けど、日本に戻った方がいいのかもしれませんね…
JUNGKOOK}どうしてそう思うの?
凪紗}あ、えっと、、
JIN}ジョングガ。メイクしてこい。
JUNGKOOK}}口調がきつく、
JUNGKOOK}はーい。またあとでね。
凪紗}あ、、はい。
JIN}…でしょ?大丈夫…だから。
凪紗}はい。…ます。
会話が途切れ気味でよく聞こえなかったけど、何かあることはわかった。
スタッフ}お好きな傘を取って下さい。
JIN}無難に黒かな。
SUGA}俺も。
JUNGKOOK}僕もそうします。
RM}僕はブラウンにしようかな。
JIMIN}僕もそれにしまーす。
V}このカーキにしよっと。
JーHOPE}赤にしようかな。
カメラマン}センターJUNGKOOKさんに合わせてもらって、後ろにRMさん、Vさん、SUGAさん。前の方にJーHOPEさん、JINさん、JIMINさんで散らばる感じでお願いします。
BTS}はい。
公園での撮影。木製ベンチが一つと、周りに木が数本たってるだけの閑散とした背景。ちょうど今は雨が降ってる。
カメラマン}早速、撮影はじめまーす!パシャパシャ…目線くださーいパシャパシャJーHOPEさん少し顎引いて、パシャパシャ目線外してください…パシャパシャ、JINさん傘を少し下げて、Vさん肩の力を抜いて、パシャパシャ…SUGAさんは見上げて、パシャパシャ…一旦確認します!
JIN}結構濡れるね。
SUGA}草で水はけがあまり良くないですね。
凪紗}寒くないですか?
JーHOPE}大丈夫だよ。
RM}タオルもらえる?
凪紗}はい、どうぞ。
撮影中はその感情を引き出すために雰囲気にあった曲を流す。確認は写真のバランスをカメラマンさんやPDさんと見て、次の撮影で修正するところを話し合ったりする。
JUNGKOOK}もう少し真ん中に寄りましょうか?
PD}そうですね。それでRMさんの傘もしっかり見えるようになりますね。
カメラマン}傘ありをもう1本撮ったら、個々に移りまして、それから傘なしを撮りたいと思いますけど、どうですか?
RM}これから天候がどうなるかによりますね。
スタッフ}これから少し弱まるみたいです。
RM}なら、そのまま進めましょう。
カメラマン}それではさっきの配置についてください。
凪紗}タオルいただきます。
JUNGKOOK}ありがとう。
凪紗はフードを被ってるだけで傘をささないで俺らをサポートしてくれてる。
JーHOPE}なんか上手くいかないんだよね。
JIMIN}疲れてるんですか?
JーHOPE}かもしれないし、なんか突っかかることがあるんだろうな。
JIMIN}それはみんなですよ。心当たりしかないですよ。
そう。みんなの顔を見ればわかる。今日はまた違う悲しみというか、悩みというか、色々と迷う部分があるんだと思う。
カメラマン}撮影再開します。
天候もそんなに変わることもなく撮影は進み、残りは個々での傘なし撮影のみとなった。
カメラマン}衣装等の準備が整いましたら、始めたいと思います。
スタッフ}少しかかると思います。
カメラマン}なら、、ちょっと気になってたんだけど、そこの背の高い女性の君。ほら、そこのフードを被ってる君。
BTS}え?バッ!
一斉に視線が一人の女性に注がれた。
凪紗}え?!私ですか?!
カメラマン}そう君。ちょっと撮影に協力してほしいんだけど。
凪紗}は、はい!タタタタッ
カメラマン}世に出すわけじゃないけど、君に何かを感じたから撮ってみたくて。
凪紗}でも、何もしてないですし、服もラフ着なんですけど…
カメラマン}それがいいんだよ。そのまま撮ってみよう。
凪紗}チラッ…
BTS}ガッツポーズ!
凪紗}や、やってみます…!
カメラマン}ありがとう!傘選んだら、全部置いてカメラの前に立って。
凪紗}は、はい。
JUNGKOOK}やばい(爆笑)
V}ガチでやることなった(笑)
こっち側としてはめっちゃ面白い(笑)メンバーも凪紗のことを知ってる人達もみんな笑ってる。
凪紗}あの、傘貸してもらってもいいですか?
スタッフ}え、あ、どうぞ。
凪紗}ありがとうございますペコリ
カメラマン}それでいいの?
凪紗}はい。今の姿に一番合うと思うので。
選んだのは、ビニール傘だった。
カメラマン}うん、ナイスチョイスだよ。じゃ、こっちから指示出したりするから従ってね。
凪紗}わかりました。
RM}めっちゃ緊張してるね(笑)
SUGA}震えてる(笑)
カメラマン}自分が思うことしていいよ。
凪紗}自分が思ぅ…わかりました。フゥ…
カメラマン}いくよ…
BTS}!!!!!!!
まただ。感情に直接触れられてるみたいな感覚が雰囲気を包み込み、声帯を持ってかれたようにその場が静まり返った。
カメラマン}パシャパシャ最高。そのまま目線こっちにパシャパシャそうその感じ、パシャパシャ右向ける?パシャパシャいい感じ、そのまま後ろ姿も撮ろうパシャパシャ、いいねぇ…ゆっくり正面向いてパシャパシャそう、パシャパシャ!!よし、一旦おいで。
凪紗}ありがとうございますペコリ
カメラマン}皆さんもこちらに来て見てください。素晴らしいものが見れますよ。
BTS}ウワァ…!!
SUGA}んだこれ?!
JIN}こんなの初めて見た…
JUNGKOOK}『青い涙』が見える…
RM}これは…芸術ですね…
カメラマン}君が良いと言うなら、傘なしも撮りたいんだけど、どう?
凪紗}やります。
カメラマン}よし、やろう。
JIMIN}鳥肌すごいんだけど…
JUNGKOOK}マジで何者なんだ…?
傘を閉じて、カメラの前に立った瞬間…
バラバラバラ!!
雨足が一気に強くなり突き刺すように雨が降り出した。なのに2人して笑っている。
SUGA}狂ってる…けど、最高。
カメラマン}パシャパシャ雨に負けてないよ!
嘘…また違う凪紗が現れた。より一層オーラが強くなって、どんどん吸い込まれる。
カメラマン}パシャパシャもっと出せる!パシャパシャもっと!
凪紗の表現が良くなるほどカメラマンさんもヒートアップしていき、喉を詰まらせるような感覚になる。
カメラマン}パシャパシャそうそうそう!目線こっちにパシャパシャ後ろ向いて少しこっちに顔向けて、パシャパシャこれこれ!パシャパシャ目線外して!パシャパシャ回りながらパシャパシャそのまま座って!パシャパシャ、いいよ〜!
どんどん空気が張りつめていく。自然と息が詰まって、何故か目頭が熱くなっていく。
カメラマン}ラスト全部出して!パシャパシャパシャパシャ!!…よし!お疲れ様!よく頑張った!
凪紗}ハァハァ、ありがとうございましたペコリ
張り詰めた空気が緩んだ瞬間、一筋の涙が全員の頬を伝った。
パチパチパチパチ!!
カメラマン}おいで。また違う君がここにいるよ。とっても魅力的で感情を揺らせるほどのオーラを放つ君がいるよ。
凪紗}ありがとうございますペコリ
カメラマン}息が上がるほど一生懸命にやってくれてありがとね。その甲斐あってみんなの顔見てみ?
凪紗}え、、うそ…私が、?
カメラマン}そうだよ。君の力がさせたんだよ。
RM}本当にこんな感情になったのは初めてだよ。
JIN}言葉が出ないよ…
凪紗}泣かないでくださいよ。
ジニョンの涙を拭ってる。あまり泣かないジニョンが泣くほどだもん。そりゃ僕は…
JUNGKOOK}な、なぎさぁぁ(号泣)
JIMIN}なんでこんなに涙を溢れさせるんだよぉ(泣)
カメラマン}僕もこんな子初めて出会いました。初めてで僕について来れる子なんてそうそういないんですけど、彼女はしっかり着いてきましたし、僕の想像を越すほどでした。素晴らしい逸材ですよ。
凪紗}そんなことないですよ。
カメラマン}写真は会社に送りますね。なので、事務所の方に伝えておきますよ。
RM}色々とありがとうございますペコリ
カメラマン}いやいや。それより、どうだった?
凪紗}とても学びに繋がりました。凄く素直に表現ができてスッキリしました。
カメラマン}それは良かった。力あるんだから活かせるように頑張りなよ。天性の才能だからね。
凪紗}本当にありがとうございますペコリ
カメラマン}さ、お次は皆さんの番なので彼女に負けないくらいの素敵な撮影ができるように、もう少し頑張りましょう!
BTS}よろしくお願いしますペコリ
撮影する頃には雨足は弱まり撮影しやすくなったとはいえ、感化されてしまった僕らは納得が全然いかなくなってしまった。心優しいことにカメラマンさんをはじめとするスタッフさん一同が納得するまで付き合ってくれるということで、結局15時までかかってしまった。
カメラマン}これなら納得いきませんか?
RM}そうですね。
V}やっとできましたね。
カメラマン}君もこっちにおいで。
凪紗}は、はい!
ずぶ濡れになってしまった凪紗は俺が持ってきていた着替えを着ている。うん、可愛い!
カメラマン}とても綺麗でしょ?
凪紗}ウワァ…!!とても綺麗です…!私も頑張らないと、
JーHOPE}俺らは凪紗に感化された結果こうなったんだから。
凪紗}いやいや!私はこれ程までに色を出せませんでしたよ。
カメラマン}それぞれのカラーがあるということだよ。君の色とJーHOPEさんの色は全然違うけど、どちらも綺麗だよ。
凪紗}そ、そう見えているのなら良かったです。
カメラマン}うん。それでいい。君は君でいることに意味がある。飾っていても自分の首を絞めるだけ。この世界ではどれくらいラフでいられるかで決まったりするものだよ。簡単じゃないけど一度ハマれば彼らのようになれるよ。
凪紗}彼らのように…私でいる…意味、
カメラマン}若いうちは悩めるだけ悩んでおきな。悩んだ分だけ色んなことが知れて、色んなことに直面するから。苦しいけど苦しんだ分だけ人は見てくれてるから。
凪紗}はい…!
カメラマン}僕は君を心から応援してるよ。
スタッフ}そろそろ天候が荒れてきそうなので、もう終わりましょう。皆さん本当にお疲れ様でした!そして、ありがとうございましたパチパチパチパチ!!
BTS/凪紗}ありがとうございました!ペコリ
宿舎
RM}風邪ひかないうちにお風呂に入ろう。シャワーだけじゃどうにもならないからね。
JIN}ごめん、ちょっと先に入らせてもらう。
JIMIN}僕も先に入ります!
JーHOPE}やっぱり雨だと体力もってかれるね。
SUGA}それに長時間になったしな。
V}眠たい…カクン、、カクン
RM}寝てな。体だけ冷やさないようにね。
JUNGKOOK}凪紗…大丈夫かな?
JーHOPE}うーん…行かなくちゃいけないみたいだし、仕方ない。
JUNGKOOK}また体調やっちゃうよ…
SUGA}止めても聞かないんだ。それだけあいつの人生に関わる事なんだろ。
RM}…明日で最後ですね。
JーHOPE}早いねぇ。でも、初めてのことばかりで少し遠かったのかもな。
SUGA}あぁ。色の濃い1ヶ月だったな。
JUNGKOOK}離れちゃうんですかね、
RM}どうあろうとも彼女の人生だ。俺らの意見を押し通すのはダメ。これから少し仮眠とって話しましょう。
SUGA}そうだな。
JUNGKOOK}}行かないでほしい…
俺らが話し終わってしばらくしてから凪紗は帰ってきた。一切の疲れを見せずに自分の部屋に行き、そのまま顔を出すことはなかった。
俺らもすぐに寝た。けど、皆んな眠りは浅かっただろう。凪紗という存在の意味を何度も何度も考えて、何度も何度も見失いそうになるからだろう。
JUNGKOOK}こんなにも息詰まるなんて…
SUGA}こんなにも苦しくなるだなんて…
JーHOPE}こんなにも気になるなんて…
JIMIN}こんなにも離したくないなんて…
RM}こんなにも痛いだなんて…
V}こんなにも暗いだなんて…
JIN}こんなにも愛したいなんて…
BTS}知らなかった…
試験二十九日目終了
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!