11月10日 .
あっという間に退院日となった
私は荷物は特になかった
いつもの服に着替えて
携帯をポケットに入れてた
そして、大事な " ぬいぐるみ " を持った
実はこれ大事なものなの
しんにぃが、亡くなったあの日…
私の誕生日のとき
しんにぃが私にくれた誕生日プレゼント
少ししんにぃに似たもふもふの
黒い猫のぬいぐるみ
2ヶ月近くこのぬいぐるみもなかったから
寂しかった しんにぃがいないみたいで…
けど、それよりも前にしんにぃがくれた
しんにぃとお揃いのネックレス
それがあっただけよかったのかも
それで、隆に鍵を託して
取ってきてもらったの
ちゃんとお礼は言ったよ?
あ…そう言えば隆に鍵返してもらうの忘れてた…
…まぁいっか
帰れるかもわかんないし…
ガラガラ
蘭くんと竜くんが来た
多分 後でまた3人が来るだろうから
看護師さんに手紙を託して私は蘭くんと竜くんと
病院を出て行った
.
公園 .
ここは少年院近くの公園
私は少年院に行って会いたい人がいた
面会所
そう、私は一虎に会いに来た
一虎は懲役10年
けーすけは亡くなっていないけど
致命傷で今は生死の境目
そんな中懲役を短くすることは
できなかったらしい
でも一虎はそれでいいって言ってた
しんにぃのこともちゃんと償いたいって
更生したいって言ってた
改心してくれて嬉しい…
一虎は元は本当に優しいから
一虎は泣いていた
目 がさっきと違ったんだ
きっともう死のうなんて考えてない
.
.
警察署を出て私は公園に向かっていた
少し気持ちが晴れたみたいだった
…でもそんな思いはすぐに消えた
公園で2人と誰かが話してるのが見えた
…稀咲鉄太だ
突然息が苦しくなった
冷や汗が止まらなかった
鉄太君に私は逆らった
何されるか分からない
怖かった
"殺される"
そう思った
気づけば私は無我夢中で走っていた
どこかも分からないとこに向かって
逃げるように走り続けた
.
どこか分からない
裏道みたいなところまで来た
竜くん達には先帰っててってメールしちゃった
私は近くにあったベンチに蹲るように
座り込んだ
ぬいぐるみを抱きしめて
届くはずのない願いを呟いた
ドッ
そのとき、後ろから誰かに
何かで頭を殴られた
誰…顔を見ようとした
でもフードを深く被っていて
黒い手袋…何も見えなかった
だんだん視界がぼやけていく
……私死ぬのかな
けーすけに…みんなに…会いたかった…な…
私はそこで意識を失った _
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!