俺は、愛雅と分かれてから、急いで準備をした。
そして、親、妹への手紙を置いておいた。
ちなみに言うのが遅れたが、お父さんとお母さんは買い物へ、妹は友達と遊びに行っている。
まぁ、あと2・30分したら帰ってくるだろうけど。
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"お母さんへ
突然ごめんね。
今までありがとう…。
今、多分びっくりしてるよね。
そりゃそうだ……。
じゃあ、これ聞いたらもっとビックリするかな。
俺は、これから○○町の宇宙場に潜入して、今日発のロケットに乗る。そして、この地球から出るよ。"戦争"という存在が嫌いだから。目をつぶるんだ。
だからもうお別れだ。
もう会えなくなるけど、この家族とすごした思い出は絶対に忘れないよ。
少ない時間だったけど、俺の事を育ててくれてありがとう。
そして、俺の事を産んでくれてありがとう。
喧嘩したりムカついて暴言吐いちゃったりしたけど、俺はお母さんが俺のお母さんで良かったと思う。
本当に今までありがとう。
絶対に戦争なんかで死ぬなよ。
蒼太より"
"お父さんへ
今、母と一緒にいるか?もし居るならもう俺の言いたいことはわかるかな。
今までありがとう。
父のその笑顔が、俺は大好きだったよ。
正直いってお別れは寂しいけど、でも、これが俺の下した決断だから。
まぁでも、もしかしたら、戦争が終わったら戻ってこれるかもな?なーんて笑笑
本当に今までありがとう。
絶対長生きしろよ。
蒼太より"
"亜美(妹)へ
おかえりなさい!
帰ってきて手洗いうがいはしたかな?笑
突然なんだけどさ、俺、この家を出るよ。
「え?嘘でしょ?」とか思うかもしれないけど、本当だよ。
戦争という存在から逃げるため、俺は月へ行くんだ。幼なじみの愛雅と。
本当はまだこの家でお前の面倒を見たりお父さんやお母さんとも笑い合いたい。
でも、これは俺が決めた道だから。
俺は必ず月へ行ってみせる。
だから、お前にはもう会えない。
お前と喧嘩したり仲直りして笑いあったりすることも、もうないんだ。
だけど、お前の事は月に行っても忘れないからな。お前も俺の事覚えてろよ?
……、元気でな。
戦争なんかで死ぬなよ?
兄、蒼太より"
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俺は家のドアを開け、愛雅との待ち合わせ場所に向かった。
待ち合わせ場所に着くと、約束していた時間より5分前なのに、愛雅はもう来ていた。
愛雅はそう言って笑う。
その笑顔の奥には、少し悲しみの表情が見えた気がした。
愛雅、可愛いな……
って、そんなこと考えるな!俺!!
平常心平常心、俺は何も思っていないいい!!
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!