第134話

Club the Cage(二次小説)
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2020/01/29 13:21
Club the Cage

紅蓮の炎は蒼穹の海に

貿易港で有名な港街、
近年の干ばつで食料もまともに育たず、
貿易港を利用する船も少なくなり
街の人は生活が苦しくなっていった

そんな街の一角の民家

柊)このところ街の皆の生活が困窮している
食糧さえまともに手に入らないんだ。
志)干ばつの被害は相当だからな。

柊)それなのに、税率は下がるどころか上がるばかり、最近では領主の屋敷から家具が運び出されていたな、なんでも新しくするとかで。
志)贅沢な話だな。
柊)このままでは内乱が起きかねない。
志)群衆の鬱憤も晴れないだろうなw
柊)笑い事じゃないんだぞ、志季。
志)分かっている、笑わなきゃやってられないだろう。ほら、お前も飲め柊羽。
(ワインのボトルを持ちながら)

柊)知ってるだろ、俺は飲めない。
そもそもその酒はどうしたんだ。
志)なに、残ってた最後の一本だ...
最後くらい、お前と呑み交わしたくて持ってきた。完全に呑めないわけじゃないんだろ?

柊)...少しだけ、本当に少しだけだからな。
志)分かった、分かったw

グラスに注がれる赤ワインがランプの火に照らされて淡く揺らめく

志)こうしてランプの火に当てると、
この赤ワインも炎のように見えないか?
柊)見えなくもないが...どうした?
今日は変だぞ?
志)なに、語りたくなった..それだけだ。
炎はやがて消える、この国に残るのは海だけだ。

柊)?...港街だからな、本当にどうした?
志)俺の仕事が何なのか、話した事は無かったな。
柊)...あぁ、先月からこの街に来てから
そんな話はした事がないからな。
志)いずれ分かるだろうが、その時は笑ってくれ。
柊)笑える仕事なのか?
志)あぁ、愚かで滑稽なほどになw
楽しかった、おやすみ。
(立ち上がり、外へ)
柊)おやすみ。

その日の夜だった、
領主の屋敷が襲撃された
街の人たちが暴挙に出たのだ
柊羽もその後を追って領主の屋敷へ

目に映るのは
松明に照らされた領主の屋敷
こじ開けられた扉から中に雪崩れ込む人々

だが、そこに望むものなど無くて

)家具一つ無いだと!
)食料さえもないぞ!
)俺たちの金はどこにいったんだ!
)領主もいないぞ!

あの強欲な領主がいない?
人々の不安が増す最中

志)俺の家で騒々しいぞ、何時だと思っている。

階段の上からゆっくりと降りてくる見慣れた姿

柊)志季?

)俺の家だと!?
志)そうだ、俺の父親はここの領主で
その父も先月死んだ...俺はその後を継いだだけだがな。

柊)志季が、領主の息子?

信じられない、その考えが思考を止める

)お前が領主だと言うなら!お前が責任を取れ!
)そうだ!そうだ!金を返せ!食料をわたせ!

志)見ての通り!この屋敷には何もない!
パンの一欠片さえな。
)お前が隠したのか!
志)隠しなどしない、目に見えるのが真実だ。
)嘘だ!

不穏な空気...そのせいなのか
群衆の中でポツリと残酷な言葉が吐かれる

その言葉は群衆を呑み込んでいく
もう誰にも止められないほどに

柊)やめろ!皆んな、やめるんだ!!

その声もかき消す程に声は大きくなって
止まらない群衆は志季の命を喰おうとする

志)ふん、お前たちにくれてやるものなどここには無い。俺の命でさえもな...

こめかみにゆっくりと当てられるのは銃

柊)やめろ!!志季!!

その声に視線が絡んで、

志)さよならだ、柊羽。(微笑んで)

パァン!!

乾いた銃声が鳴り響き、力なく倒れる体を
すがるように抱きとめる

柊)どうして..!!
志)....

夜が明ける、窓から朝日が差し込むその様は
まるで天からの迎えに思えた

)船だ...船が来たぞ!

高台にある領主の屋敷から
大きな貿易船が港に訪れるのが見えた

人々は港へと向かう、柊羽も港へと歩く
貿易船からイカリが降ろされ止まると
船から船長が降りて来て、
柊羽へと語りかける

船長)遅くなり申し訳ない、何せ積荷が多くて。
柊)遅く?何か頼まれていたのですか?

船長)ええ、ここの領主様に。
屋敷の家具と宝飾品を全て売り払って、その売り上げで食料と干ばつに耐えられる苗と種をと
仰せつかりましてねw いやぁ、売るのが大変で
何せ屋敷の家具全部ですからね。

)家具を全部?
)食料に苗?

柊)1つ聞きたい、それを頼んだ領主は年寄りでしたか?
船長)いいえ?若い領主様でしたよ。
さあ、積荷をどこに下ろしましょうか?
)えっと、こっちの倉庫に。
船長)はいはい。

1人船を見上げて
昨夜の志季の言葉を思い出す

「いずれ分かるだろうが、その時は笑ってくれ」

柊)この事だったのか?...ははw
凄いな...まるでスケールが違う....はははw
....笑え..るわけが..ない、ここにお前がいないのだから..志季...

頰を伝う涙が潮風に流される
炎はやがて消え、残るはこの海だけ...
強く生きよう、友のために

終わり




Club the Cage(撮影裏)

台本の読み合わせ

志)...
柊)悲しい物語だな。
志)意義がある。
柊)ん?
志)俺、こんな役ばっか!!
(悲惨な最後)
柊)えっと...年功序列だから、仕方ないんじゃないか?
志)...しゅーくん話がある。
柊)台本の読み合わせが終わってからな。
志)よし!なる早で終わらせる!
柊)はははw

終わり

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