第115話

雪月花〜月野百鬼夜行外伝〜「雪」
121
2019/12/12 14:18
雪月花〜百鬼夜行外伝〜

雪が降る、
血濡れた大地を白に塗り替えながら
俺はただ、ひっそりとそこに立っていた
時折肌に触れる冷たい滴は
溶けた雪かそれとも別の何か、か..

志)冷たいな、こんな所にいても不毛なだけだろうに。

気配を感じないまま声が聞こえて振り向く

柊)志季...
志)飲むか?上物の酒だ、滅多に手に入らない。
柊)いつからいたんだ?
志)お前が泣き出した頃からか?
柊)はは..泣いてなんかないさ。

雪原と化した草原にはもはや生は無く
死さえも途絶えて

志)お前が心を砕いても、何も変わらない。
柊)分かってはいるんだ...

志)勝手に産まれて、勝手に死んでいく
人は俺たちに取っては儚く、もろい存在だ。
それにいちいち心を向けていたらキリが無い。

柊)そうだな...でも、せめて安らかに..
それを願うくらいはいいだろう?
志)ふっ、物好きめ。

酒瓶を傾けて、大地を清める

柊)志季?
志)清めの酒だ、この俺がここまでしたんだw
効果は絶大だろう?
柊)ははw そうだな、そうに違いない。

立ち上がり、歩き始める

志)帰るぞ、ここは寒い。
柊)あぁ、帰ろう皆んなの所へ...

2人の足跡を雪が消していく
そして残るのは、真っさらな雪だけ


終わり

プリ小説オーディオドラマ