愛璃、影人、優が3人で主役を務める、映画『言葉以上の気持ちを君に』。撮影が始まってから、早くも2週間が経った。
この映画は、簡単に説明すると、愛璃の演じるヒロインを、影人と優の演じる2人のヒーローが奪い合う話だ。最終的には、ヒロインは優の演じるヒーローと結ばれる。
今日は、優の演じるヒーローが、ヒロインに告白するシーンの撮影だった。愛璃は、
(愛璃)優との告白シーンは前にオーディションでも演じたし、大丈夫でしょ!
と、たかをくくっていた。
愛璃が、すでに優がいるカメラの前にスタンバイすると、優が急に口を開いた。
愛璃は、返事をし、優と視線を合わせた瞬間、優に肩を抱き寄せられた。驚いたのもつかの間、優は耳元で、ゆっくりとささやいてくる。
愛璃がその言葉の意味を理解する前に、優は愛璃から離れ、
と続けた。優の言葉の意味を問おうと、愛璃が口を開いた瞬間、
スタッフの声に遮られた。
様々な感情の波に呑まれそうになる愛璃を置いて、撮影は始まってしまった。
反射的に、愛璃も流されるようにして演技を始める。
そうして、なんとか談笑のシーンをやり過ごすが、ついに、告白シーンが訪れた。
愛璃の演技に異変が起きたのは、その後だった。
その言葉の先が言えない。だんだん呼吸が荒くなっていく。顔が青白く変わったと思うと、愛璃は半ば倒れるようにして、その場に座り込んだ。
スタッフたちが駆け寄ってくる。
愛璃はかろうじて呟いた。
遠くで、監督とスタッフの話し声が聞こえる。それを意識の外で聞きながら、愛璃は気を失った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。