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第17話

*ステージ-17*
映画の撮影初日を明日に控え、影人は、自分の部屋で台本とにらめっこしていた。演技をするのは初めてではないが、自分の演技を優や愛璃と比べると酷く見劣りしているように思え、少しも気が抜けない。
合同ライブのとき、影人は、愛璃への気持ちに気づいてしまった。自分でも、アイドル失格だと思う。けれど、そんなことを気にしちゃいられないほど、自分の、愛璃への気持ちがすでに大きくなっていることにも気づいていた。
あと1つ、影人には無視できないことがあった。それは──
影人
春野……優……
ささやくように、しかし芯の通った声で影人は呟く。
影人は、優も愛璃に好意を寄せているのではないか、と考えている。愛璃によると、"デート"と名を称して、2人でよく出かけることがあるらしい。
愛璃は気づいていないようだが、そのときの優の言動には、ただの"友情"や"先輩・後輩"としての好意では説明できないものがある。
また、自分が2人の"デート"に、少なからずヤキモチをやいていることにも気づいていた。
影人
ほんっと……バカみたいだな。俺も。
そう呟くと、再び台本に目を落とした。が、その瞬間、スマホから通知の音が鳴った。
スマホを手に取り、LINEを開く。すると、優からメッセージが届いていた。
『折下影人君!16時に、変装して駅前の喫茶店集合!ヨロシクね♪』
数秒画面を見つめたあと、影人は手早くメッセージを返した。
影人
『わかりました!』
なぜ呼び出されたのかを少し不思議に思いながら、影人は台本を閉じ、着替え始めた。
──15時50分。影人は、待ち合わせ場所である駅前の喫茶店に着いた。店内を見渡すと、奥の方で、優らしき人が控えめに手招きしていた。
影人君!来るの早いね~、さすがっ!ささ、すわってすわって♪
勧められた通り、影人は席につく。優と視線を合わせて話を促すまでもなく、優はさっそく話し始めた。
いや~、ついに映画の撮影明日からだねっ。どう?練習は順調??
影人
はい、まぁ……ぼちぼちですかね。ところで、今日はなぜ俺を呼んだんですか?
影人がそう話した瞬間、先程まで笑っていた優の目が急に真剣になる。それを見て、影人は思わず息を飲んだ。
単刀直入に聞くね。影人君って愛璃ちゃんのこと好きでしょ。
優に言われた瞬間、影人は飲み物に伸ばしかけていた手を止めた。数秒どう返答しようか悩んだ後、影人はこう返した。
影人
優さん……ですよね?
優は、少し目を開き驚いた後、淡々と告げた。
そうだよ。俺、愛璃ちゃんのことが大好き。一応言っておくけど、君に愛璃ちゃんを渡す気なんて少しもない。
影人は、流れるように紡がれる優の言葉に、とてつもない重みを感じて、思わず目をそらしたくなった。だが、優はじっと影人の目を見つめ、そらさない。影人も不思議と、そらすことができずにいた。
俺は、映画の撮影が終わるまでに、愛璃ちゃんに気持ちを伝えようと思ってる。だから、──
そこまで言うと、優は席を立ち、座っている影人の背後に立った。そして、影人にだけ聞こえるような小さな声で、紡いだ。
愛璃ちゃんを取られたくなかったら、ちゃんと真っ正面から俺にぶつかってきてよね?
影人は、優が去った後も、なかなか席を立てずにいた。なんとか立ち上がり、足早に家へ戻った後も、色々な思いが交錯し、その日は眠れない一夜を過ごすことになったのだった。