ここは、東京武道館。満席の客席の中で愛璃と影人は、合同ライブを行っていた。
なぜこんなことになっているかというと、愛璃、EITO、優を主演とした映画の撮影が決まったのが、そもそもの始まりだった。その映画の撮影に向けて、一緒に仕事をすることが極端に少ない愛璃と影人のために、中島と、影人のマネージャーである小林がこのライブをセッティングしてくれたのだ。……が。
(愛璃)いくらなんでも、この規模は大きすぎじゃないでしょうか……(焦)
慣れない大きな場所でのライブに、愛璃はとても緊張していた。
それでもなんとか曲を歌いきり、残すところ、最後の1曲となった。
──ライブが終わり、ここは楽屋の中。愛璃と影人は、飲み物を飲みながら、会話に花を咲かせていた。
影人は、会話をしながらずっと、顔から熱が引かないのを感じていた。ライブのとき、汗でキラキラ輝いている愛璃の姿を見てから、ずっとだった。そのせいで、先ほどからずっと愛璃とちゃんと視線を合わせることができない。
楽屋をでて、扉を閉めた後、影人は、扉にもたれかかるようにしながら、ずるずるとしゃがみこんだ。
──影人が初めて、自分の中にある愛璃への気持ちに気づいた瞬間だった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。