ここは、東京の原宿。沢山の人が行き交う道の真ん中で、澄原愛璃は、夢にまでみたスカウトをうけた。
溢れんばかりの驚きと喜びに頬を紅潮させ、中島に詰め寄る。
間髪入れず返した答えに、中島の方がついていけず、聞き返す。
すると愛璃は、気が狂った様に、思いの丈を全身全霊で伝えてきた。
言い終わって、ちょっと熱すぎたかな?と思い返し、恐る恐る顔を上げた愛璃が見たのは、満面の笑みを浮かべた中島の顔だった。
愛璃は、嬉しさに涙が溢れそうだった。事務所へ行く道の途中、中島がマネージャーをしていること、今、アイドルを探していたこと、事務所に所属している他のアイドルのことなど、沢山の話を聞いた。だが、愛璃の頭の中に、そのような情報は少しも入らず、ただただ、"アイドルになれた"という喜びで一杯だった。
こんな情緒不安定で、どこからどうみても庶民の塊のような愛璃が、その人生の華々しいスタートを切ったことに、誰も、愛璃自身も、気付くことはなかったのだ。
──そして、芸能男子達による、激しい恋の争奪戦も。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。