無料スマホ夢小説ならプリ小説 byGMO

891
2018/08/06

第7話

一章-3
翌日の、昼休み。四時間目が終わった直後。
相原ゆず
相原ゆず
柏木君、昨日は本当にごめんなさい!
相原が、そんな言葉とともに柏木のところまでやってきた。
ちなみに俺は今、柏木の隣の席なので、二人のやり取りは自然と視界に入ってくる。
相原ゆず
相原ゆず
お詫びと言ってはなんだけど、お弁当を作ってきたの。食べてもらえるかな?
相原が弁当と思しき包みを柏木に差し出すと、教室内がかすかにざわめいた。
柏木ファンの女子たちが(抜け駆けすんなよ!)とばかりに鋭い視線を相原に注ぐのがわかったが、鈍いこいつは気付いていないようだ。
馬鹿、そういうのはもっとこっそり渡すようにしろ。余計なヘイトを集めるぞ……と、見ている俺の方が冷や冷やする。
柏木篤臣
柏木篤臣
えっ……そんな、気にしなくていいのに……
柏木は戸惑ったように目を瞬いたが、すがるように見つめる相原に、「じゃあ」と微笑んだ。
柏木篤臣
柏木篤臣
せっかくだし、いただこうかな。今日は学食にするつもりだったから、ちょうどよかった。でも、今後はもうこんな風に気を遣わなくていいからね
相原の厚意も受け取りつつ、やんわりと関係をけん制する柏木の対応に、ピリッとした空気が一気に和らいだ。
はちみつレモン王子は優しいから、みんなの前で女子をすげなく扱うことはできないけど、別にあの子が好みというわけではないようだ……そんな認識が、今の台詞で女子たちに生まれたようだ。やるな、柏木。
一方相原は、そんなやり取りが周囲で密かに行われているとは夢にも思わないようで、「うん!」と顔を輝かせると、柏木の前の席に腰を下ろした。
柏木が受け取った包みを開くと、二つのタッパーが出てきた。
柏木篤臣
柏木篤臣
こ、これは……!
タッパーの蓋を開けた柏木が、絶句し、先ほど以上に周囲がどよめく。
相原ゆず
相原ゆず
特製シーフードカレーだよ。柏木君のイメージで、英国風にしてみました♪
弁当にカレーという時点で変化球だが、何よりそのカレーはなぜか──青 か っ た。

何を入れたー!?
パッと見、魚の骨やよくわからない粒や謎の細かい葉っぱが浮かんでいた。
英国風ってなんだ? 不味いってことか?
ヒロインの料理がド下手ってのも確かにベタっちゃベタだが、これは別に真似したわけではなく、相原はガチのようだった。
こーゆーとこだけしっかりヒロイン属性持っててどうする!
臭いもなんだか硫黄くさい、危険な感じがした。俺なら「こんなもん食えるかー!」と叩きかえす代物だ。
しかし、柏木篤臣は根っからのジェントルマンだった。
相原ゆず
相原ゆず
どうぞ、召し上がれ
にこにこしながら期待に満ちた目で反応を待つ相原に、「不味そうだから無理」なんてすげなく対応することは、彼にはできなかったらしい。
「い、いただきます……」となんとか引きつった微笑みを浮かべると、ぶるぶると震えるスプーンでカレーをすくい、決死の瞳でパクリと一口ほおばった。
お ま え こ そ 勇 者!
瞬間、ぶわっと柏木の両目から涙が噴き出す。
相原ゆず
相原ゆず
柏木君!?
柏木篤臣
柏木篤臣
……お、美味しいよ……でも僕、急用を思い出したから、ごめん……
蒼白のままなんとかそこまで告げると、漢・柏木は口元を押さえ、ふらつきながら教室を出て行った。柏木……おまえはよく頑張った……。
一ノ瀬慧
一ノ瀬慧
相原、そのカレー、味見したか?
相原ゆず
相原ゆず
ううん
一ノ瀬慧
一ノ瀬慧
一口でいい、食べてみろ
相原ゆず
相原ゆず
えっ、でもそんなことしたら間接キス……
一ノ瀬慧
一ノ瀬慧
いいから食え!
かあっと一丁前に照れる相原の口に無理やりスプーンを突っ込むと、一拍置いてから「ごふうっ」という呻きとともにショートボブの頭が机に突っ伏した。
仇はとったぞ、柏木……。