朝方。伝令係である観察型の榊出雲は廊下を騒がしく走っていた。
そのことは後ほど、月宮の全員に知らされた。
すれ違いざまに九十九から告げられ、腹立たしさを胸に抱きつつも、裕道は床に入った。
そして深夜3時頃のこと。
裕道はふと目を覚まし、部屋をそっとでた。
廊下を歩いていると、向かいから九十九が歩いてきた。
裕道は静かに刀に手をかける。
そして、少し口角を上げながら九十九を強く睨みつけた。
2人は広い庭に出て、剣を晒した。
そして勢いよく刃を交わらす。
裕道は九十九のふる速い刀の動きを素早く避ける。
剣が弾き合う音が屯所境内に響き渡る。
そう強くはっきりと声を大きくする九十九は今まで見たことがなかった。
裕道は何も言えなかった。
その場に立ち尽くし、拳をぎゅっと握りしめ、剣をしまった。
その途端、裕道は暁ノ刃に手をかけ、そっと引き抜く。
大きな音と声で目を覚ました幹部達はすぐさま庭へ駆けつけた。
出雲たちが声をかけても2人は聞こうとしなかった。
暁ノ刃の力に耐えながら九十九は言った。
嵐のように風が吹き荒れる裕道と九十九の間に、白夜は走って行った。
白夜は裕道のもとへ来るなり、自分の刀でその刀を裕道の手から弾き飛ばした。
宙を舞う暁ノ刃を白夜はジャンプして取った。
白夜の容姿はみるみる暁の力に染まる。
白夜は暁ノ刃の刃先を裕道の喉元に突き刺すようにした。
裕道は静かに鞘を渡した。
白夜は受け取ると静かに暁ノ刃をしまうと、二人とも元の姿へ戻った。
苦しさからひざを地面につけて咳を吐く裕道に、白夜は問いかけた。
裕道は息混じりに「はい」と答えた。
裕道は何も言わずただその場に俯いたままだった。
夜が明け、日が昇る。
九十九と裕道には5日間の休金と謹慎が下された。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。