ある日、昼見世の支度していると、突然香純さんに呼ばれた。
そうだ。忘れていた。
私は香純さんに頼まれてくノ一をやっているんだった。
つまり香純さんは、彼らの隠し持っている暁ノ刃を盗んで壊そうという作戦をたてている。
それはもちろん、そんな幻の凄い力を持った刀を所持しているとどんなことに悪用されるかもわからないからだ。
もしかしたら、香純さんが大好きなこの京都を滅ぼそうと企てている雨宮順平率いる烏丸革命隊と同じ目的かも知れない。
人を斬ることは嫌いだ。怖いし、恐ろしい。
でも、私は人を殺したことがないと言ったら嘘になる。
朱紗屋事件のとき、私は3人武士たちを斬った。
以前香純さんに貰った小太刀をそっと懐から取り出し、ぎゅっと握った。
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そうして夜月が顔を出す真夜中。
私は香純さんから黒色の忍びのような服を着させられ、小太刀を懐にしまい遊郭を出た。
もちろん、私がくノ一をやっているなんてことは香純さん以外誰にも言っていない。
もしもばれたりしたら即月宮団に斬られる。
私は髪を束ねていつもと雰囲気を変えてみた。
...これでばれないとは断言できないけど。
私は香純さんと二手にわかれてその屋敷に忍び込んだ。
私は1階を忍び足で暁ノ刃を探し回った。
すると、誰もいない床の間に、例の暁ノ刃があった。
私は作戦通り口笛を吹いた。
「口笛か!?」と刀を抜こうと辺りを見渡す数名の武士が部屋から出てきた。
私は物陰にそっと息を潜める。
その時だった。
突然玄関から大勢の武士が入ってきた。
私は暁ノ刃を握りしめ、いまだ来ない香純のいる2階へ駆け上がろうと廊下をでたその瞬間ー。
大勢の武士が刀を抜いて斬りあっていた。
その武士たちには黄色の羽織を来た、見た事のある容姿だった。
どうして彼らがここに居合わせているの!?
すると背後から「何者だ!」と聞き覚えのある声がした。
ばっと後ろを振り向くと、そこにはしまが刀(通常の)を構えていた。
しまは酷く驚いていた。
私は何も言わず、急いで上に駆け上がった。
しまは「待て!」と追いかけてくる。
顔を思いっきり見られてしまった!
これは本当に緊急事態だ!
香純さんは丁度1階に降りようとしているところだった。
私は小声ながらも怒鳴るように言い放った。
後ろから「誰だ!」としまが息を切らしながら追いつけてきた。
しまは暁の力を使うたびに寿命が縮んでいるため、走ったり激しく動くと体力が通常の何倍も浪費してしまう。
そう言うと香純さんは白い煙幕を投げつけてしまの視界を阻む。
その隙に香純さんは私をお姫様抱っこをして、2階の窓から飛び降りた。
私たちは屋敷を後にし、遊郭へ戻った。
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そこには明日香が落とした未完成の暁ノ刃があった。
するとしまは少し間を開けて、何か考えてから「まぁな。」と呟いた。
九十九は裕道に背を向けたまま言った。
裕道は落ちている未完成の暁ノ刃を手に取って屋敷を後にした。
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一方その頃遊郭では。
その内容は如何にも重大なことだった。
ひとつは私を印象付けるものの一つと言っても過言ではない、この長い髪をばっさり切ってしまうということだった。
そうすることで、しまと出会ったあの長い髪をひとつに結んだくノ一とは別人という証拠もできる。
つまり、私がくノ一ではないというアリバイ工作をつくること。
2つ目は、月宮団から離れてこの麻蔵遊郭の遊女として廓に住むということだ。
そうすれば月宮団と距離を置くことになるため、正体がばれることを恐れず生活ができる。
しかし、どちらにしろ絶対に安全だとは言いきれない。
私の答えは
“やります。”
その答えを出したときは、まだ予想だにしなかった。
あの人に、再開するなんてー。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!