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第3話

神様のペットになりました
 春風を受けて和服男の髪が軽く揺れる。
 私の目にはどこからどう見ても普通の人間に見える。
 だけど……
神様
おい
九条瑠衣
……え?
神様
いつまで突っ立ってるつもりだよ。中、入るぞ
    私の返事を待たずに屋敷に戻っていく男。
 その背中に手元のスマホを再び向けてみるが、
九条瑠衣
……やっぱり、写らない
 男の姿はどうしたってカメラに写ることはなかった。

◇◇◇
神様
さて、と。これでゆっくり話が出来るな
 応接間にてテーブルを挟んで向かい合う私達。
 緊張から自然と背筋の伸びる私に対し、男はだらりと姿勢を崩し、まさしく自分の家であるかのようにくつろいでいた。
九条瑠衣
あの……
神様
ん? なんだ?
九条瑠衣
貴方は本当に神様……なんですか?
神様
好きに思えば良い。お前が神様だと思うなら神様だし、いきなり家に居座る不審者だと思うならそれでも良いだろう
九条瑠衣
…………
神様
そう固くなるな。俺がお前に危害を加えることはない。むしろ逆だ
九条瑠衣
逆?
 私が鸚鵡返しに聞き返すと、男はこくりと頷いた。
神様
古い盟約でな。俺は九条の家を繁栄させる為に存在している。お前も知っていると思うが、九条はそれほど歴史のある家柄じゃあない。元はただの流通業者に過ぎなかった九条が今の地位を得たのはひとえに俺の加護によるものだ。つまり、九条の人間は俺にとって庇護するものであり、敵対するようなものではないんだよ。言ってる意味、分かるか?
九条瑠衣
分かるけど……ちょっと信じられない
 簡単に言うと目の前の男は神様で、その力で私の家は金持ちになったと。
 言葉にすると簡単だが、それを信じるとなると話は別だ。
神様
俺の姿が視えるのに、信じられないと来たか
九条瑠衣
ごめんなさい
神様
……まあいい。これから一緒に暮らすことになるんだから、徐々に理解すればいい
九条瑠衣
はい…………はい?
 あれ、今なんか妙なこと言われなかった?
 一緒に暮らすとか、なんとか……
神様
何を驚いているんだ。じじいが次の当主にお前を指名したんだ。それはつまり桜屋敷の所有権がお前に移ったということ。俺と一緒に暮らすことになるのは当然の……
九条瑠衣
ちょ、ちょっと待って! 一緒に暮らすって、貴方と!? ここで!?
神様
何か不都合でもあるのか?
九条瑠衣
不都合って言うか……え、ええー?
 さっき会ったばかりの男といきなり同棲なんて普通に考えてあり得ない。しかも、相手は普通の人間ですらないのだ。不都合なんて言葉で片付けられるレベルの問題ではない。
九条瑠衣
いや、私にも自分の生活があるし、学校も……
神様
俺はお前の生活に深く干渉したりはしない。ただ俺の衣食住を保証するだけで良い。そうすれば九条の家は俺が守ってやる
 しかも、なんか私がこの男の世話をするみたいな話になってるし。
九条瑠衣
いや、私は別に九条の家がどうなっても……
神様
なんだよ。俺と暮らすのが嫌だってのか?
九条瑠衣
い、嫌というか……
 あ、あれ? なんか……神様不機嫌になってない?
神様
そういえばさっきも出て行けとか言ってたが……本来、九条の持つ資産は全て俺が与えたもんだ。この屋敷も、お前がこれまで食ってきた飯も、今着ている服だってそうだ。俺の加護が受けられないって言うなら、今すぐその服を置いてこの家を出て行け
九条瑠衣
そんな、俺の酒が飲めないのかー、みたいに言われても……
 私が何と言って断ろうかと考えていると、自称神様は腕を組み独り言をぶつぶつと呟き始める。
神様
そうだよ。よくよく考えればお前には最初から拒否する権利なんてなかったんだ。九条の資産は全て俺が与えたもの。逆に考えれば九条の全てが俺のものってことだ
九条瑠衣
あれ、なか勝手に話が進んでない? あれだったら私、元のアパートに戻りますけど……
神様
良し、決まりだ
 ぱし、と膝を打った神様は立ち上がると私を見下ろしながら堂々と宣言する。
神様
お前、今日から俺のペットな
 私にとって理不尽と言うしかない、その宣言を。