無料ケータイ小説ならプリ小説 byGMO

前の話
一覧へ
次の話

第9話

お節介な同級生
    ガチャン、と自販機の取り出し口にペットボトルの落ちる音がする。それからすぐにピピピと自販機がルーレットを始め、そして……
九条瑠衣
……またアタリだ
 8888と並んだ数字を見ながら私は眉を潜めた。これで今週三回目。いくらなんでも当たりすぎだ。
九条瑠衣
バグってんのかなー、うーん……まあ、いいか
 貰えるものは貰っておく主義の私は二本目のミネラルウォーターを手に入れ、学校へと向かうことにした。朝の通学路はいつもと変わらぬ平凡な道のりだ。いつもと違うことが起きたのは私が学校の下駄箱まで辿り着いた時だった。
九条瑠衣
……ん?
 中に何か入っている。手にとって見ると、それは小さな封筒だった。その場で中を取り出し、一枚の便箋を手に取る。内容は放課後、体育館裏に来て欲しいというものだった。
九条瑠衣
(んー……これ。どっちだろ)
 私は少し考えて、近くのゴミ箱に手紙を捨てて教室へと向かった。別にどっちだって良い。どちらにしても行く気なんてないのだから。私がすたすたと廊下を歩いていると……
御門春明
九条さん
 背後から呼び声がかかる。振り返ると、そこにはイケメンが立っていた。
 ちょっとびっくりするほどに整った顔立ち。髪を茶髪に染めてはいるが、おちゃらけた印象は受けない。それは彼のイメージによるものもあったかもしれない。
九条瑠衣
御門君、ですよね
御門春明
俺のこと知ってるんだ。嬉しいな
九条瑠衣
ええ、まあ。御門君は有名ですから
 御門春明という少年は学校一のイケメンとして有名だった。友達がおらず、一度も同じクラスになったことがない私でもぱっと名前が出てくる程度には。
九条瑠衣
何か御用でしょうか?
御門春明
用って程でもないんだけどさ。これ、良くないんじゃない?
 そう言って御門君が渡してきたのは先ほど私が捨てた封筒だった。
御門春明
人の恋路に割って入るのもどうかと思うけど、少なくとも本気の想いには本気で応えてあげるべきだと思う
 どうやら私が手紙を捨てたところを見られていたらしい。迂闊だった。
九条瑠衣
ご忠告感謝致します。最近、こういった悪戯が多いのでまたその類かと思ってしまったのですが……そうですよね。これがもし本物だったなら、これ以上失礼なことはありません。放課後、向かわせてもらうことに致します
 私は申し訳なさそうな表情を意識して、ぺこりと頭を下げる。
 すると効果は覿面だった。
御門春明
ああ、ごめん。そっか、そういう事情があったんだね。やっぱり部外者が口出しするようなことじゃなかったか
九条瑠衣
いえいえ、御門君の意見は何も間違っていませんよ
御門春明
そう言ってもらえると助かるよ
 バツが悪そうに柔らかい笑みを浮かべる御門君。なるほど、これはモテる顔だ。
九条瑠衣
ご忠告ありがとうございました。では
 最後に軽く会釈して、その場を後にする。
 これで一応、「九条」の娘としての立ち振る舞いは出来たと思う。話の流れとはいえ、放課後に用事が出来てしまったのだけが憂鬱だが。
九条瑠衣
はあ……仕方ないか
 学校の有名人に見つかってしまったのだ。後で本当は行かなかったことがバレたらあっという間に悪い噂が広まってしまうかもしれない。
 私は諦めにも似た感情のまま、放課後を待つのだった。