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第1話

君と桜の木の下で
    死んだ祖父の遺言で相続した小さなお屋敷。そこにソイツはいた。
 意地悪で、高圧的で、そしてどこまでも身勝手な……
 ──私の『神様』が。

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九条瑠衣
久しぶりだなぁ、桜屋敷
    見事な筆記で『九条』と書かれた表札を前に、昔を思い出す。
九条瑠衣
そういえば桜の木に登っておじいちゃんに怒られたこともあったっけ
    引越し作業がまだ残ってるけど……ちょっとくらいならいいよね。
九条瑠衣
わあ…懐かしいな
 桜の木は記憶にあるものより少し小さく見えた。それだけ私も成長したってことかな? なんて思っていると……
謎の青年
お前が九条瑠衣だな?
九条瑠衣
……え?
 突然聞こえた声は上空から。
 見上げると、そこには木の枝に器用に腰掛ける和服の男がこちらをじっと見つめていた。端正な顔立ちと、雑にまとめられた短い黒髪。まるで映画の舞台からそのまま抜け出してきた主演俳優のようだ。
謎の青年
おい。俺が聞いてるんだからさっさと答えろ。なにぼけっと突っ立ってるんだよ
九条瑠衣
…………へ?
謎の青年
ちっ、めんどくせぇな
 男は桜の木から、まるで軽業師のような身のこなしで私の目の前に降り立った。そして私が距離を取る暇もなく、その細い指で私のあごに手を添え、
謎の青年
「ん。やっぱりお前が九条瑠衣で間違いなさそうだな。ジジイの言ってた通りだ。小生意気に成長しやがって」
    くいっ、と正面から私の顔を覗き込むのだった。
九条瑠衣
い、いきなり何するのよっ!
謎の青年
おっと
    私が腕を振ると、ひょいと身を引く和服の男。
謎の青年
なんだよ。キスされるとでも思ったか?
九条瑠衣
~~~~っ!
謎の青年
はは、一丁前に赤くなってやがる
    こ、こいつ……バカにしてっ!
九条瑠衣
ここは私の家よ! さっさと出て行かないと不法侵入で訴えるから!
謎の青年
きゃんきゃんうるせえな。お前は犬か
九条瑠衣
い、犬っ……!?
謎の青年
それとここは俺の家だ。出て行くのはお前の方だからな
九条瑠衣
は、はあ?
 俺の家って、この人も九条家の人間? いや、でも親戚の集まりでもこんな人見たことないし……
九条瑠衣
あなた、一体誰なのよ
謎の青年
俺か?  俺は、そうだな……
    私の問いに男は少しだけ間を置き、こう答えた。
謎の青年
俺は──『神様』だ
    悪戯っ子のような無邪気な笑みを浮かべて。