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第7話

二人の距離
    静まり返った真夜中に、私とクロは縁側で二人、話し続けていた。
九条瑠衣
というか他の人には見えないとか、そういうのは最初に言っておきなさいよね。恥かいちゃったじゃない
クロ
それはお前の自爆だろうが。俺に責任はねぇよ
九条瑠衣
そもそもなんで私にはクロが見えるわけ? そこのところから詳しく説明して欲しいんだけど
クロ
さあな。それは俺も知らん。だが、俺みたいな存在が見える奴は一定数いるもんなんだよ。そして、その能力は遺伝する。お前や爺、ついでに言えば九条の初代当主に俺が見えたようにな
九条瑠衣
つまり九条の血筋がそうさせるってこと?
クロ
あ。有り体に言えばな
九条瑠衣
……そう
 九条。ここでもまた九条、か。望んで生まれたわけでもないのに、その名前はいつまでも私を縛り続ける。忌々しいまでに。
クロ
まーた、難しい顔しやがって
九条瑠衣
クロと違ってこっちは色々と考えることが多いのよ
クロ
ほーう、言うじゃねえか
 私の挑発にクロはにやりと笑うと、ぐいっ! と私の後ろ頭を抑えて強引に自分の膝へ押し付けた。
九条瑠衣
ちょっ!? いきなり何するのよっ!?
クロ
暴れんな。じっとしてろ
 いつになく強引なクロ。内心で軽いパニックになりかけた私に、
九条瑠衣
……え?
 クロは私の髪を優しく撫で付け、告げる。
クロ
お前はいちいち考えすぎなんだよ。たまにはぼーっと空でも眺めてろ
 クロの膝に頭を乗せ、夜空を見上げる私の目の前には綺麗な星空が広がっていた。
九条瑠衣
……びっくりした
クロ
だろ? 田舎でなくても条件さえ揃えば綺麗な星が見えるもんだ
九条瑠衣
そっちじゃなくて。貴方のことよ
クロ
ん?
九条瑠衣
ちょっと……乱暴されるのかと思った
 男の力で押さえつけられた瞬間の恐怖に、頬が赤くなる。
 本当はちょっとなんてものではなかったが、私のプライドがそう言わせた。
 そんな私の虚勢を前にクロは、
クロ
馬鹿か。前にも言ったろ。九条の人間に俺が危害を加えることはない
 私の頬を人差し指でぷにぷにと突きながら、そう一笑に付した。
クロ
どんなことがあろうとも、お前は俺が守ってやるよ
九条瑠衣
…………
 守ってやる。
 そんなことを言われたのは私にとって初めてのことだった。
 だから……
九条瑠衣
……やめて
 私はクロの手を振り払い、立ち上がる。
九条瑠衣
貴方に守ってもらうような筋合いはないわ。私のことは私が何とかする
 こちらを見上げるクロを見下ろしながら、私は私の譲れない想いを口にする。
九条瑠衣
私は誰の力も借りたりしない
 それは拒絶の意志。
 睨むように向かい合う私達を、月明かりだけが優しく照らしていた。