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第6話

月明かりの下で
    深夜0時を回る頃。私は自室のベッドの中で、悶々とした感情を持て余していた。思い出すのは昼間のこと。クロが他の人に見えない存在だというのは私にとって衝撃的なことだった。
九条瑠衣
本当に何者なのよ……クロ
 クロが普通の人間ではないことは分かっていた。だけど、ここまで常識外の存在だとは思わなかった。今更ながらに思う。クロとは何者なのか。一体、どんな存在なのか。
九条瑠衣
あーっ、もうっ!
 考えても分かるはずなんてない。
 私は頭の中を切り替える為に、水を求めて台所へと向かった。

 無駄に長い廊下を歩く。台所に続く縁側を通ろうとした時のことだった。
クロ
よう、眠らなくて良いのか?
 思わぬ呼びかけにびくっ、と体が固まる。
 見れば縁側に腰掛けて、星空を眺めるクロがそこにいた。
九条瑠衣
ちょっと考え事してただけ。すぐに寝るわ
クロ
そうか
 こちらを見ないまま、ぼーっと月を眺めるクロ。
九条瑠衣
……クロは寝ないの?
クロ
俺は人間と違って寝る必要がないからな
九条瑠衣
そう、なんだ
 歯切れの悪い私に、そこで初めてクロはこちらに視線を向けた。
クロ
怖くなったか?
九条瑠衣
え? 何が?
クロ
俺のことが、だよ。俺は普通の人間とは違うからな。そういう感情を向けられることには慣れてる
 月の光に照らされるクロの表情はどこか寂しそうで、辛そうだった。
 だからだろうか……
九条瑠衣
隣、邪魔するわね
 私は衝動的に、クロの場所を奪う勢いで彼の隣に腰を下ろしていた。
九条瑠衣
誰が誰を怖がってるって? 馬鹿言わないで。貴方は私にとってただの邪魔な居候よ。疎ましく思うことはあっても、恐怖することなんてないわ
 私がまくし立てるようにそう言うと、クロはぽかんとした表情を浮かべ、
クロ
ふっ……まったく。口の減らない奴だな
 心底おかしいといった様子で口元を隠して笑うのだった。