第14話

Episode Thirteen
164
2022/04/02 07:05
狐李斗
狐李斗
その方法は…
でも…やっぱり…
凛奈
凛奈
ダメ……だよ…
弟くんの声を思わず遮ってしまった。
だって…だって…。
凛奈
凛奈
2人が傷付く所は見たくないよ…。
颯太
颯太
凛奈…。
狐李斗
狐李斗
ふぅん。
狐李斗
狐李斗
だったら、
狐李斗
狐李斗
君がどうにかしてくれるのか
相変わらず冷たい視線。
先程から全く変わらない氷のような表情。
胸が裂けそうになる。
凛奈
凛奈
君は…
凛奈
凛奈
どうして身内である兄を拒絶するの?
張り裂けそうになりながら絞り出した小さな声。
彼に届いたかは定かではない。
でも、彼の表情は揺らいだ。
狐李斗
狐李斗
んな事、気にする必要は無い。
狐李斗
狐李斗
元々、世界同士の行き来は違反行為なんだ
狐李斗
狐李斗
だから…僕は兄を正しい方へ…導く。
凛奈
凛奈
それだけ?
狐李斗
狐李斗
あぁ、それだけ。
悲しげに揺らめく蜂蜜色の瞳。
実際彼は、きっと兄の事を思ってる。
だから、あんなに悲しそうな表情になれる。




暫くの間、沈黙が流れた。
そして弟くんが顔を上げる。



その顔に光は無い。
狐李斗
狐李斗
あーもう。嫌だなぁ
狐李斗
狐李斗
最悪だ。
怠そうに腕をブラブラさせる。
狐李斗
狐李斗
壊しちゃおっかな
にんまりと笑ってそんなことを告げる悲しげな色の瞳。
狐李斗
狐李斗
なにもなかったことに
狐李斗
狐李斗
あーでも、面倒くさいや
もういい、バイバイ
弟くんはそう告げて消えていった。
颯太
颯太
最初っから最後まで意味わかんねぇ
クソっと言って地面を蹴る颯太
その時だった。
ガシャガシャ   パリーン





ジャラジャラ バラバラ





バキバキ バリッ
四方八方から何かが割れる音がする。
いや…何かでは無い。
この世界は...

























【鏡】
鏡だ、鏡の割れていく音
ここまでは来ていないが、この〝セカイ〟から鏡が割れていく音がする。
...何で。
紫苑
紫苑
この空間...から......狐李斗が消えた...。
隅の方から、聞こえた小さな声。
紅也
紅也
なるほど...じゃあ...
赤兎
赤兎
この空間から、鏡そのものと言えるであろう彼が消えた事により、この空間を成り立たせている〝大部分〟が崩壊を始めているんだ。
凛奈
凛奈
と言うことは...
全員が息を飲んだ。
鏡の世界であるこの空間から、鏡が消えれば...。
彩乃
彩乃
ここは無くなっちゃうってこと?
恐らく、その通りだ。
それが無ければ、この空間がぐちゃぐちゃに崩壊する。
鏡が映す鏡ではなく、ただのカガミになる。
そのカガミが折れ、破損し、崩壊した姿が広がるただの無に近いガラクタだらけになる。
凛
…学校……
凛がボソリと呟いた言葉に、ハッと思い出したかのように反応する。
彩乃
彩乃
そうだ!あの中には
颯太
颯太
いや、大丈夫だ。
皆が焦っているのを制したのは颯太だった。
颯太
颯太
先生達あいつらは大丈夫。言うと俺らも別に平気。
赤兎
赤兎
それはどうしてだい?






















颯太
颯太
ここは鏡の世界じゃねぇから。

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