凛が尋ねると、颯太はこくりと頷いた。
要するに、このバリアが壊れたところで私達のいる場所はガラクタだらけになるけど、世界が崩壊して帰れなくなる。とかはないって事ね。
赤兎の意見に殆どが頷いた。
そして彩乃の意見であの学校に行くことになった。
行く途中もパラパラと細かい破片が降ってきていて、自然と足がはやくなっていき、最後の方にはもう駆け足になっていた。
校門の前に着くと、そこには前に会ったあの優しげな女性がいた。
手招きをしてピキピキと軋む音が聞こえる中学校の中へと私達は歩を進めていった。
そしてあの〝教室〟という場所へ移動した。
凛は片目…金色の方の目を瞑りながらそう言った。
確かに、この部屋に慣れるのはまだまだ先になりそうだ。
ぽつり、それだけ言うとピシャリと扉を閉めて遠くへと歩んでいく音が聞こえた。
彩乃が退屈そうに屈み、呟いていた。
いずれこうなるだろうなとは思っていた。拒絶されるのが怖い。でも、この人達なら受け入れてくれるような気もした。
皆表情が暗くなるのがわかった。そうだよね、訳ありだもんね。みんな。
彩乃ちゃんがぼそりと言葉を零した。
その後に、続ける。
独り言、と言いつつもここにいる人達は今やることが無いので必然的に彩乃ちゃんの話を聞くことになる。
皆が彼女の方へと顔を向けた。
ぽつり、ぽつりと静かに語る。でも、どこか焦りを感じた。
一度、彩乃の口が止まった。よく見ると震えている。
その時の事を思い出したのかがくがくと肩まで震え出した。
「気持ち悪い、気持ち悪い」と呟きながら。
下二人が〝なんとか〟行かせてもらってる。というのはこの事なのだろうか。
彩乃が代償を払うことによって、妹達は勉学に励める…。
私はそっと彩乃ちゃんの肩を抱いた。
逃げられない恐怖に怯える細くてか弱い肩を。
私は、はっとした。
初めて来た時、思いっきり楽しもうよ。と、彩乃が言っていたこと。
あの時の笑みは、何か凄いところに来れた!みたいな笑みでは無かった。
〝やっと恐怖から逃れられた〟
という安堵の笑みだった。
そう言って、彩乃の口は閉じた。
そして、その目は安堵を灯していた。
彩乃が言葉を言い終わるや否や、紅也が口を開く。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!