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第15話

Episode fourteen
158
2022/08/21 10:29
凛奈
凛奈
それって…そういう事…?
颯太
颯太
あいつは、この世界を…いや、空間を
颯太
颯太
思うままに操れるよう、鏡を張った。
凛
バリアみたいなものなのかな?
凛が尋ねると、颯太はこくりと頷いた。
要するに、このバリアが壊れたところで私達のいる場所はガラクタだらけになるけど、世界が崩壊して帰れなくなる。とかはないって事ね。
凛奈
凛奈
じゃあ、弟くんはどこに…
颯太
颯太
さあな、俺もなんでも知ってるわけじゃねぇし
赤兎
赤兎
けれど、空にもヒビは入っている。崩れて破片でも当たったら流石に…
赤兎の意見に殆どが頷いた。
そして彩乃の意見であの学校に行くことになった。
行く途中もパラパラと細かい破片が降ってきていて、自然と足がはやくなっていき、最後の方にはもう駆け足になっていた。
校門の前に着くと、そこには前に会ったあの優しげな女性がいた。
珂神 蜊栖
皆様お揃いで、先程ぶりですね
凛奈
凛奈
あ、あの時の…
珂神 蜊栖
話は後です。まずはこの中に
手招きをしてピキピキと軋む音が聞こえる中学校の中へと私達は歩を進めていった。
そしてあの〝教室〟という場所へ移動した。
凛
なーんど見ても慣れねぇな…この部屋。
凛は片目…金色の方の目を瞑りながらそう言った。
確かに、この部屋に慣れるのはまだまだ先になりそうだ。
珂神 蜊栖
ここで待っていてください。私が帰ってくるまで。
凛奈
凛奈
あなたはどうするの?
珂神 蜊栖
…掃除。ですかね。
ぽつり、それだけ言うとピシャリと扉を閉めて遠くへと歩んでいく音が聞こえた。
彩乃
彩乃
って言っても…暇よね。
彩乃が退屈そうに屈み、呟いていた。
紅也
紅也
ここで待ってるしか……ないんだよね。
彩乃
彩乃
じゃあ…嫌かもしれないけど、皆がここ鏡の向こう側になんで居るのか聞いてもいいかな
いずれこうなるだろうなとは思っていた。拒絶されるのが怖い。でも、この人達なら受け入れてくれるような気もした。
凛奈
凛奈
あ…、う、うん、そうだね
皆表情が暗くなるのがわかった。そうだよね、訳ありだもんね。みんな。
彩乃
彩乃
…嫌?ならいいよ…話さなくても
彩乃ちゃんがぼそりと言葉を零した。
その後に、続ける。
彩乃
彩乃
じゃあ、私独り言、言ってるね。暇だったら聞いててよ。
独り言、と言いつつもここにいる人達は今やることが無いので必然的に彩乃ちゃんの話を聞くことになる。
皆が彼女の方へと顔を向けた。
彩乃
彩乃
私ね、肉親が兄妹だけなの。
彩乃
彩乃
両親は事故でいなくなって、私達今は引き取った貰ってるんだけどね。
ぽつり、ぽつりと静かに語る。でも、どこか焦りを感じた。
彩乃
彩乃
兄妹、私含めて五人いるんだ。だから、お金に余裕なくって。
彩乃
彩乃
私と、上にいるお兄ちゃん二人は高校に行けてない。下二人は何とか行かせて貰ってる。
彩乃
彩乃
私は、一応引き取ってくれてる人に教えて貰ってるんだけど…
一度、彩乃の口が止まった。よく見ると震えている。
彩乃
彩乃
そ、その人…ね、凄い、怖くって
彩乃
彩乃
分からない所があると、ぶたれて、ご飯抜かれて、罵られて
彩乃
彩乃
で、お酒を飲んで帰ってくる時があるんだけど…。
彩乃
彩乃
その時は、体の色んなとこ…触って、きて…、っ
その時の事を思い出したのかがくがくと肩まで震え出した。
「気持ち悪い、気持ち悪い」と呟きながら。
彩乃
彩乃
でもっ、でもっ…抵抗したら、妹達の学校の話切り出されるし…っなんも、出来なくて。
下二人が〝なんとか〟行かせてもらってる。というのはこの事なのだろうか。
彩乃が代償を払うことによって、妹達は勉学に励める…。
凛奈
凛奈
彩乃ちゃん…
私はそっと彩乃ちゃんの肩を抱いた。
逃げられない恐怖に怯える細くてか弱い肩を。
彩乃
彩乃
お兄ちゃんにも、妹にも、言えなくて…
彩乃
彩乃
でもっここに来れば何もされないから…
私は、はっとした。
初めて来た時、思いっきり楽しもうよ。と、彩乃が言っていたこと。
あの時の笑みは、何か凄いところに来れた!みたいな笑みでは無かった。
〝やっと恐怖から逃れられた〟
という安堵の笑みだった。
彩乃
彩乃
安心できる場所逃げ場だから…
そう言って、彩乃の口は閉じた。
そして、その目は安堵を灯していた。
彩乃
彩乃
ありがとう。聞いてくれて。
紅也
紅也
…話す。
彩乃が言葉を言い終わるや否や、紅也が口を開く。
紅也
紅也
次、話すよ。

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