中間テストの結果は、惨敗だった。
なんとテスト範囲が変わっていたのだ。それもE組には通達をしていなかった。きっと皆、テスト範囲が変わっていなかったら、50位以内を取れていたと思う。
先生は落ち込んでいたけれど、カルマを始めとしたE組生徒で殺せんせーをE組に留めることが出来た。殺せんせーが出ていかなくて良かったと思う。
そういえば、私のテスト用紙もカルマに持っていかれた。まあ、役に立ったらしいから良いのだけれど。
けれど、私たちにテストの余韻を感じている暇はなかった。そう、もうすぐ修学旅行なのだ。
「カルマ君、同じ班になんない?」
カルマと話していたら、渚がカルマを同じ班に誘っていた。私もカエデから同じ班の誘いを受けていたので、必然的にカルマと同じ班になりそうだ。
......うう、ちょっと嫌だなぁ、せっかくの修学旅行で暴力沙汰とか嫌だよ?
杉野も同じことを思っていたようだが、渚の「気心知れてるし......」にも同意するので、もう諦めることにする。
いかにカルマに不良を煽らせないか考えていると、神崎さんも班に加わることになっていた。とても嬉しい。かわいい子は大歓迎だ。
その後私たちはどこを観光するか話し合っていた。私はどんどん修学旅行が楽しみになってきた。
修学旅行当日。皆と修学旅行を楽しむのも良いけど、もしかしたら京都にいるかもしれないリヴァイ兵長を探す、絶好の機会だ。
新幹線はA組からD組はグリーン車で、E組だけ普通車だった。まあ、私はどっちでもいいけど。その事について、誰かが言っていた。
お金は成績優秀者に回される、と。そしてE組からは貧乏の香りがする、と。けれど成績優秀なのと貧乏なのは関係ないのでは?
......あれ、私成績良かったはずなのにな。わかんない
私頭悪いのかも。と思っていたが、カエデが「あなたの方が頭良いっての!」と言っていたので、私は頭が良さそうだ。良かった。
無事京都に着いた私たちは、神崎さんの希望コースへと来ていた。
「一見さんはお断りのお店ばかりだから、目的もなく、ふらっとくる人も居ないし、見通しが良い必要もない。だから私の希望コースにしてみたの。暗殺にぴったりなんじゃないかって」
さすが神崎さんだ。国家機密の殺せんせーを暗殺しようとしているのを見られる心配がない。本当に暗殺にぴったりな道だ。
「マジ完璧、何でこんな拉致りやすい場所歩くかねぇ」
前から不良が数人出てきた。そして後ろからも不良の声がした。振り返るとと案の定、不良数人が私たちを囲んでいた。
カルマが不良を一人倒しているうちに、後ろの私たちが不良に拐われそうになった。だが私は男一人に負けるような女じゃない。
訓練兵のときだって、対人格闘術は手を抜かずに真面目に取り組んだ。お陰でリヴァイ兵長ともやりあえるくらいには強くなった。まあ結局兵長が勝つのだけれど。
「触んな、気色わりぃ」
手始めに触ってきた一人を倒した。だが、それを見た不良たちは、私を四人係で襲ってきた。回りには班の皆もいるので、あまり派手に倒せない。
「くそっ、、、」
結局私は拘束されてしまった。
私たちは、不良に車に乗せられ、近くの廃ビルに連れ込まれた。
「おめぇ、どっかで見たことあるって思ったんだけどぉ、これさぁ、おめぇだろう」
そう言って見せてきたのは、派手な格好をした神崎さんだった。
「......さっきの写真、真面目な神崎さんでもああいう時期があったんだね」
「ちょっと意外だった」
「うん、うちは父が厳しくてね、良い学歴、良い肩書きばかり求めてくるの。そんな肩書き生活から離れたくて、名門の制服も脱ぎたくて、知ってる人がいない場所で、格好も変えて遊んでたの。」
喋っている神崎さんの瞳には、ハイライトがなかった。
「バカだよね、遊んだ結果得た肩書きはENDのE組。もう自分の居場所がわからないよ」
そう神崎さんが言い終わった後、不良が私たちに話しかけてきた。
「オレらの仲間んなりゃ良いんだよ。オレらも肩書きとか死ねって主義でさ、エリートぶってる奴らを台無しにしてよぉ、なんつうか、自然体に戻してやる? みたいな。オレらそういう遊びたくさんしてきたからよ」
痴漢の濡れ衣着させたり、女の子をレイプしたり、私の同期よりも酷いことをしている。すべて犯罪だ。
「最っ底」
「お前らクソだな」
リヴァイ兵長直伝の煽り文句だ。カエデは本当にそう思ったから言ったんだろうけど、私は挑発も込めて口にした。
こう言えば大抵のチンピラは挑発に乗ってくる。ほら、不良って大体頭悪いから。
「......なにエリート気取りで見下してんだぁ? ああ? おめェもすぐに同じレベルまで落としてやんよっ」
不良はカエデの胸ぐらを掴んだ。
「カエデっ!」
......っえ! 私じゃないの? クソだよ? クソって言ったんだよ?
「いいかぁ、宿舎に戻ったら涼しい顔してこう言え、楽しくカラオケしてただけです、ってなぁ。そうすりゃだぁれも傷つかねぇ、東京に戻ったらまた皆て遊ぼうぜぇ、楽しい旅行の記念写真でも見ながらぁ、なぁ......よぉ」
......あ~、気色悪い、この笑い方。さっさと黙らせよ。
「っし、切れた!」
私は個性でナイフを使って縄を切っていた。ちゃんとバレずにできてよかった。
「っな!? お前、なんっ......」
「黙れ、糞豚野郎」
私は目の前にいた不良を背負い投げした。そして他の不良が戸惑っている間に二人の拘束も解いた。
「二人とも、絶対に捕まらないようにね。後、私からできるだけ離れないで」
「う、うん」
「っ、わかった!」
二人がうなずいたのを見て、私は両手に刃を出した。立体起動装置は出していない。さすがに説明がめんどくさいから。
「んな、剣っ!?」
「私に近づくなよ、あと、後ろの二人にも。もしそこから一歩でも動いてみろ、うっかり首を跳ねちゃうかもしれないから」
そう言って私は近くにあった段ボールの山を一瞬で八つ裂きにした。
「う、うるせぇ!! そんなことしても、お前なんかじゃ絶対に敵わない! 今先輩らが来てんだ!」
......どれだけ来ても大して変わらないのにね?
「ガチャ、ギィィィ......」
「ほっほら、! うちの撮影スタッフだ! ただの撮影係じゃない! お前なんかよりも何倍も強い奴らだ!」
「......ビーピー、ピービー喚きやがって。うっせぇんだよ、勝手に言ってろ。この豚野郎共」
リヴァイ兵長ならもっと黙らせることできるんだろうけど、私には無理そうだった。残念だ。体で分からせるしかないらしい。
「おいっ、この女が......て、えぇ!?」
暗闇から、ボコられた不良が投げ出された。
「修学旅行のしおり、1243ページ。班員が何者かに拉致られたときの対処法。犯人の手がかりがない場合、まず、会話の内容や訛りなどから、地元の者かそうでないかを判断しましょう。地元民ではなく更に学生服を着ていた場合、1344ページ。考えられるのは、相手も修学旅行生で、旅先でおいたをする輩です」
すごく長くなりました。ごめんなさい。
主人公ちゃんは喧嘩などをするとき、口が悪くなります。リヴァイの口調を真似てるので。喋り方はリヴァイからナンパ対策に教えられました。
次回、修学旅行2
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。