あなたside
体が動かなくなった。
それだけの理由で、無理やり伊野ちゃんを部屋から出してしまった。
せっかく呼びに来てくれたのに。
伊野ちゃんが部屋から出て、一人になる。
ベッドに横たわる動かない体。
なぜだか涙が出てきた。
理由は多分、悔しかったから。
なんで、私がこんな目にならなきゃいけないの。
よりによって、なんで私なの。
悔しくて涙が止まらない。
声を出すとバレるから、声を殺して泣く。
泣いたって何にも解決しない。
そんなことは分かってるけど、今は泣くしかない。
おじいちゃんからの手紙には、正直になれとか、周りに頼ったり甘えたりしろって書かれていた。
ごめん、おじいちゃん。この病気のことは誰にも言うつもりはないの。
だから、これだけは一人で戦わせて。
一人で戦えばどうにかなる訳じゃないけど。
あーあ、早く泣き止まないとなのに……。
本当に……嫌になってくる………
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山田side
ガチャ
視線を落として、淡々と話す伊野ちゃん。
テキトーな感じでも、ふざけた感じでもなかった。
いつもの伊野ちゃんじゃなかった。
きっと伊野ちゃんはあなたの何かを知っている。
でも、今の伊野ちゃんには、何を言っても無駄かもしれない。あなたが来るまで、静かにしていよう。
無理やりにでも、この雰囲気を変えないと。
だって、俺はHey!Say!JUMPのエースなんだから。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。