第139話

手紙の続き
2,055
2020/06/21 00:00
あなたside

山ちゃんが部屋から出たあとに気付いた。


そういえば、おじいちゃんからの手紙を最後まで読んでいない。


無造作に封筒に戻した手紙を取り出して、3枚目を読み始める。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
おじいちゃんからの、最後のお願い。それは、

正直になりなさい。
正直になるっていうのは、自分の気持ちを閉じ込めないようにするということ。嫌なときは「嫌だ」と言う。辛いときは「辛い」と言う。これは悪いことじゃない。むしろ素晴らしいことだ。自分に正直になれないと、今までおじいちゃんが挙げてきたお願いを、どれも叶えることが出来なくなってしまう。どうか、自分に正直になって、より良い自分を見つけてほしい。


ここまで4つのお願いをしてきた。「出来ない。」なんて言わないでほしい。おじいちゃんは、あなたが出来ると思ってお願いしている。あなたを信じている。ただし、無理はしないように。


後悔のない人生を過ごしなさい。きっと、素晴らしい景色を見ることが出来る。


おじいちゃんは、あなたの味方だ。
いつまでも、あなたを応援している。


ジャニー喜多川より

_______________________
読み終わると、いつの間にか、手紙に丸く濡れた後が出来ていた。


またも、私は泣いていたようだ。


おじいちゃんからの手紙は、山ちゃんの言ってることと、驚くほど重なっていた。

二人が揃って言うということは、それだけ、私に足りていないものということ。

これは、しっかりと守らないとな。


それにしても、今日はよく泣く日だったな笑


近くにあった手鏡で顔を確認する。
あなた

あははっ、顔ひどいなぁ笑

一人なのに、思わず声が出てしまった。
ジャニー喜多川(おじいちゃん)
その顔だよ、あなた。
あなた

えっ……

おじいちゃんの声が聞こえた気がして振り向くけど、誰も居ない。
あなた

居るわけない…か……。

幻聴が聞こえる私は、いよいよおかしい。

普通ならそう思ってしまう。

でも、身内が亡くなっても泣けなかった私が、おじいちゃんのことを考えて、泣いて、笑えるようになれた。そう思うと、おじいちゃんの声が聞こえるというのは、むしろ成長したんじゃないかと思う。



今も、おじいちゃんは私を見守ってくれている。


そんなおじいちゃんの期待を裏切りたくない。


手紙の内容は、"私なりに"絶対に守る。

プリ小説オーディオドラマ