山田side
仕事、いまいちだったなー。みんなわいわいしゃべってるけど、俺、そんな気になれねーし。
みんなが家に入って、最後の俺が靴を脱ぐ。他の靴を見ると、9足しかない。改めて、圭人が居ないことを思い知らされる。
ぞろぞろとみんな自分の部屋に戻っていく。
プルルル プルルル
誰かの電話がなってる。俺の……ではない。
「圭人」
その言葉を聞いて、あなたの方を見る。
そっか、圭人は楽しんでるんだ。
圭人に会いたいとか思ってるのは、俺だけか。
そう言ったあなたは、俺を見ている。
あなたのスマホを受け取って、画面を見ると、岡本圭人という文字が映っていた。
そういってあなたもどこかへ行ってしまった。
今、このリビングに居るのは俺だけ。
スマホを耳に当てて、声をかける。
俺の求めてた声が、今、俺の耳に聞こえている。
会いたかった人に俺の声が、今、届いている。
そう考えるだけで、とてつもなく嬉しくって、楽しくなって、少しだけ、泣きたくなった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。