第134話

行かない私
2,026
2020/06/17 12:21
あなたside

今日はおじいちゃんの家族葬。

でも、私は今、家に居る。

ちなみに、別の日にお別れは済ませている。

ただ、今日行かなかっただけ。

というか、行けなかった。



身内なのに来れないの?って思われるかもしれないけど、私は、行けなかった。


怖くて。


別の日にお別れは済ませたけど、その時、おじいちゃんの顔を見て、現実なんだって思ったら、怖くて動けなかった。


これから私はどうすればいいんだろうとか、おじいちゃんが居ないジャニーズってどうなるんだろうとか。

なんだか信じたくなくて、この現実から逃げたくて、今日の家族葬には行けなかった。


メンバーからは、何度も聞かれた。

「行かなくて良いの?」って。

行かないんじゃなくて、行けないの。

分かってほしかったけど、それを説明する気力もない私は、適当な返事だけをして、みんなを送り出した。

偶然にも、みんなが行くときに、体が動かなくなった。これは、行くなという暗示と捉えることにして、動けるようになってから、自分の部屋のベッドで眠りについた。


寝たけど、不安とかがなくなるわけではなくて、ただ、ちょっと疲れがとれたくらい。


今の時間は16時半。

もう、終わったのかな。

ベッドで仰向けのまま天井を見つめる。

白い天井が、無性に味気なさを感じさせる。

おじいちゃんも、病室でこんな感じで天井を見つめていたのかな。
あなた以外のメンバー
ただいまー
メンバーの声が聞こえた。帰ってきたみたい。

いつもなら元気に「おかえり」って言うけど、そんな気分じゃない。

今日は、みんなも気を使って、私には話しかけて来ないだろうし、静かに部屋にこもっておこう。


と思った矢先、私の部屋のドアをノックされた。



コンコン
山田涼介
あなた?
この声は……山ちゃんか。

山ちゃんには悪いけど、話す気分じゃない。
山田涼介
あなた、今、大丈夫そう?
山田涼介
あのさ、あなたに渡すものがあるんだけど…
渡すもの……?後でいいし。
あなた

後でいいよ。

ドアの向こうまで聞こえるように、大きめの声で返した。

少し、八つ当たりっぽく聞こえる声になったけど。
山田涼介
本当にいいの?
なんで聞き返すの。後でいいって言ってるのに。


そう思ったけど、山ちゃんがなんで聞き返したのか、理由が分かった。

















山田涼介
ジャニーさんからの手紙なんだけど。
そう言われて、私の体は無意識に起き上がり、ドアノブに手をかけていた。

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