あなたside
今日はおじいちゃんの家族葬。
でも、私は今、家に居る。
ちなみに、別の日にお別れは済ませている。
ただ、今日行かなかっただけ。
というか、行けなかった。
身内なのに来れないの?って思われるかもしれないけど、私は、行けなかった。
怖くて。
別の日にお別れは済ませたけど、その時、おじいちゃんの顔を見て、現実なんだって思ったら、怖くて動けなかった。
これから私はどうすればいいんだろうとか、おじいちゃんが居ないジャニーズってどうなるんだろうとか。
なんだか信じたくなくて、この現実から逃げたくて、今日の家族葬には行けなかった。
メンバーからは、何度も聞かれた。
「行かなくて良いの?」って。
行かないんじゃなくて、行けないの。
分かってほしかったけど、それを説明する気力もない私は、適当な返事だけをして、みんなを送り出した。
偶然にも、みんなが行くときに、体が動かなくなった。これは、行くなという暗示と捉えることにして、動けるようになってから、自分の部屋のベッドで眠りについた。
寝たけど、不安とかがなくなるわけではなくて、ただ、ちょっと疲れがとれたくらい。
今の時間は16時半。
もう、終わったのかな。
ベッドで仰向けのまま天井を見つめる。
白い天井が、無性に味気なさを感じさせる。
おじいちゃんも、病室でこんな感じで天井を見つめていたのかな。
メンバーの声が聞こえた。帰ってきたみたい。
いつもなら元気に「おかえり」って言うけど、そんな気分じゃない。
今日は、みんなも気を使って、私には話しかけて来ないだろうし、静かに部屋にこもっておこう。
と思った矢先、私の部屋のドアをノックされた。
コンコン
この声は……山ちゃんか。
山ちゃんには悪いけど、話す気分じゃない。
渡すもの……?後でいいし。
ドアの向こうまで聞こえるように、大きめの声で返した。
少し、八つ当たりっぽく聞こえる声になったけど。
なんで聞き返すの。後でいいって言ってるのに。
そう思ったけど、山ちゃんがなんで聞き返したのか、理由が分かった。
そう言われて、私の体は無意識に起き上がり、ドアノブに手をかけていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。