伊野尾side
言った方が良かったのかな………いや、でも、俺には何も出来ない。
部屋から出て、あなたの静かに泣く声を聞いたら、その場には居られなかった。
…………多分、山田なら部屋に入って話を聞くんだろうな。でも、俺にはその勇気がなかった。
だから、みんなに言う勇気もない。俺が言える立場じゃない。
でも、なんでかな。
せっかくの手打ちうどんが美味しく感じられない。
ほら、美味しいんだよ。美味しいはずなんだよ。
なのに、俺にとっては美味しくない。
みんな楽しそう。あなたが来たらもっと楽しく__
ガチャ
あなたが来てくれたら…なんて思ってたら、丁度来てくれた……。
さっき泣いてたとは思えないほど、いつも通り。
目の腫れも引いていた。少し、疲れている感じはするけど。
それでも、俺らの前に笑顔で出てきてくれた。
もちろん、嬉しかった。
でも、無理やり呼び出す形になったからか、申し訳ない気持ちにもなった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。